馬蹴祭
少年と転入生
ちょっと空気が読めない友達の話。
ケントが何かマンガを貸してくれるらしい。
ということで今日の帰り道、ケントの家に寄ることになった。
他のみんなは用事があるとか何とかで、行くのは俺と勘ちゃんの二人だけ。
だから「楽しみだなー」と勘ちゃんに話を振れば、一瞬微妙な顔をされてしまった。
「お前も来るのかよ…」
「え?何か言った?」
「……別に。」
そしてケントの家に着くなり、「今、親いないから」とそのまま通されたケントの部屋は意外と普通だった。
「どんな部屋を期待してたの?」
「何かもっとこう…普通じゃない部屋?」
クスクスと苦笑するケントは女子から『王子様』なんて呼ばれてるし、だからこれでは少し物足りない感じがする。
それは勘ちゃんも同じらしく、部屋に一歩入った瞬間から俺の隣でやたらそわそわと落ち着きがなかった。
「って、うっわ!何この本棚、本がいっぱい!マンガじゃないのがいっぱい!ちょ、勘ちゃん!勘ちゃん!どこ見てんの?こっちこっち!」
「お、おぉ…」
「じゃあ、飲み物はここに置いておくから。適当にくつろいでて。」
「おぉ…」
「さんきゅー!」
「俺はちょっと着替えるから。」
「お………え?」
「どーれーかーらーよーもーかーなっ!あ、これとかどう?なんか面白そ」
「ばっ…何してっ!?」
試しに一冊手に取った瞬間、突然の勘ちゃんの大声に驚いてそれを落としそうになる。
慌てて振り向いたものの、特に何もない。
ケントもキョトンと目を丸くして、不思議そうに勘ちゃんを見ているだけだ。
ちょうど制服を脱ぐところだったらしく、シャツのボタンを外す手を途中で止めていた。
「大垣?どうかした?」
「っ、きゅ、急用思い出したっ!帰るっ!」
「え、」
「勘ちゃん、もう帰んの?来たばっかじゃん。」
「お前も帰るんだよっ!」
「えぇっ?何でっ?」
「いいからっ!ほらっ!」
乱暴に腕を引っ張られ、今度こそ本当に持っていたマンガを落としてしまう。
そしてそれをケントが拾うのを見届けるより先に、俺は勘ちゃんによりケントの部屋から連れ出されていたのだった。
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(もう、何が何やら…?)
(まだ一冊も読んでないのに!)
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嘘つき、ロンリー。