馬蹴祭
東の青年と山犬の末っ子
※ショタコン注意。
畑を耕していた牛飼いの話。
「さぁ、何と言うのだ?」
「えーと…こんにちわぁ?」
不意に聞こえてきた二つの声。
一つは聞き馴染みのあるもので、もう一つは幼子のものだ。
微笑ましさにつられるように顔を上げ、挨拶を返そうとした瞬間、思わず「ぴしっ」と固まってしまった。
「ちょっ…アシタカ様っ!?一体何を持ってきてんですかいっ!?」
その言葉に少し怒ったように眉を顰めるアシタカ様。
きょとんと不思議そうにこちらを見下ろすのは、シシ神の森に住むもののけ姫サンの弟、ケントだ。
「持ってくるなんて、物のような言い方は止めてくれ…この子は人間だぞ。」
その「人間」の子供を、まるで荷物のように軽々と右肩に乗せた姿ではあまり説得力がないような気がするが。
それに当のケントも「おれは山犬だぞ!」と主張している。
しかしゴンザ殿のような大柄でもないアシタカ様の体格で、ばたばたと暴れるケントがよくもまぁ落ちないものだ。
ここはアシタカ様の怪力を「流石」と言うべきか、ケントの平衡感覚に感心すべきところだろうか。
……話が逸れた。
「ア、アシタカ様…」
「ん?」
「その、山犬…いや、サン達にはちゃんと断ってきた、んですよね…?」
「それが、何故か誰もいなくてな…ケントが一人で寂しそうにしていたから連れてきたのだ。」
「……………」
「アシタカ、おれ、何か間違えたのか?」
「!いや、そなたは何も間違えてなどいない。私が教えた通りにちゃんと言えていた。偉いぞ、ケント。」
たかが挨拶一つに、なんという誉めちぎり。
なんて思っていると、不意にアシタカ様からじっと睨まれたので仕方なく「こ、こんにちは…」と返した。
するとケントもまた、たかが挨拶一つに喜色満面の笑みを浮かべる。
(尾っぽだ……尾っぽが見える……)
ついでにアシタカ様らしからぬ締まりのない顔も見てしまい、思わずそっと視線を逸らした。
そして二人の後ろ姿を見送ると、すぐさま道具を放り出して慌てて駆け出した。
たたら場とシシ神の森。
別に和解してはいないが、ようやく共に平静な道を歩めるようになったのだ。
ここで水を差される訳には行かない。
(早く帰ってエボシ様に報告しなければ…!)
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(だが必死の奔走も空しく、)
(その後、山犬達の襲撃を受けるのだった)
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嘘つき、ロンリー。