馬蹴祭

東の青年と乙女の兄


とある事情を知る幼馴染みの話。









「ケントのやつもよくやるよ、本当。」


ふと、誰かがそう欠伸混じりに呟いた。


視線の先では馴染みの友が二人、相変わらずこちらに背を向けて俎岩の上に座している。


座禅か何かだろうか。

勝負事としては地味すぎて、見ている方は少々つまらない。


そのため、先の一言を切っ掛けに皆、次々と好き好きに口を開きだした。


「まったく。勝とうが負けようが、結局カヤが選ぶのはアシタカだというのに。」

「まぁ、その辺りはケントも解っているだろうよ。」

「しかし、そのアシタカもなぁ…」

「あぁ、付き合いが良いと言うか人が良いと言うべきか…毎度毎度律儀だよな。」

「俺ならもう『いい加減にしろ!』って怒鳴りつけてるところだぜ。」

「お前は、な。アシタカはいずれこのくにを治める男だ、器の大きさがまず違う。」

「そりゃそうだ!」

「……………」


何も知らない、ということは幸せだ。


楽しげな仲間達の笑い声を聞きながら、俺は一人そう思った。








あれはいつのことだっただろうか。


俺は村のじいさまに頼まれてアシタカを探していた。

珍しくケントが騒いでおらず、探すのに一苦労したことをよく覚えている。


『あ、いたいた。おーい、アシタカー。』


ようやく見つけたかと思えば何故か木陰に隠れるように佇んでいて、いくら呼び掛けても反応しない。


聞こえていないのか。

一体何をしているのだろう?


そうゆっくりと近寄って行きー…


『アシタ、カ』

『ケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケントケント』


『……………』


その視線の先に何があったかは言わずもがな。


そして俺は何も見なかった、いや、一切聞かなかったことにしたのだった。





「なぁ、お前もそう思うよな?」

「……そう、だな…」


何も知らない、ということは本当に幸せだとそう思った。




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(今でも時々、)
(夢に見て魘されることが、ある)


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嘘つき、ロンリー。