馬蹴祭
踏鞴場の長と青年
踏鞴場に出入りする商人の話。
「へぇ、綺麗じゃないか。」
「どうだい?一つ。安くしとくぜ?」
「やだよぅ、こんなもの買って一体どうしろって言うのさ。」
「そりゃあ着飾って見せてやれば旦那が喜ぶだろうよ。」
「まさか!うちの馬鹿のために?そんな冗談じゃないよ!」
そうけらけらからからと笑いながら去っていく女達を見送って、ふと溜め息をこぼした。
(失敗した。)
敷物の上に転がる色とりどりの原石は、とある筋からほぼ元手なしで大量に仕入れたものだ。
本当は山を越えた向こうで商売する予定だったのだが、仕入れ過ぎたのか、とにかく重い。
なので山を越える前に幾らか減らそうと荷を広げたのだが…とにかく失敗した。
分かりきっていたことだが、ここの女達はこういった物に興味がなく、冷やかすことはあっても適当に切り上げて、さっさと消えてしまう。
いや、未だこの場に留まる『客』の姿もあるにはあるのだが、
「ケント。」
聞こえてきた声につられ、視線をそちらへと向ける。
いつものように積み荷を改めにきた、タタラ場の女主人。
だがいつもと違うのは、その連れが厳つい大猿ではなく年若い青年であるということ。
(あのエボシ御前も所詮女だったか)と内心嘲笑ったのが、もう随分昔のことのように感じる。
「それが気に入ったのか?」
「、いえ…」
「それよりお前にはこちらの方がよく似合うよ。どれ、一つ買ってやろうじゃないか。」
「!いけませんっ!そんな畏れ多いこと…っ!」
「私のものをどう飾りたてようが、私の自由だろう?」
「っ、それは……自分はただ、…」
「ん?」
「エボシ様に、似合いそうだと、そう思いまして…」
「……そうか。」
上気させた顔を俯かせるケント。
それを眺め、柔らかな笑みを浮かべるエボシ。
もう一度、溜め息がこぼれる。
(失敗した。)
それは冷やかしよりタチが悪かった。
----------------
(髪飾り、首飾り、指飾り)
(何でもお作りいたしましょう)
(その代わり、惚気は余所でお願い致します)
---------------
リクエストありがとうございました!
*前次#
戻る
嘘つき、ロンリー。