慰労&感謝祭

ひどい話だ。


「次の遠征、俺だけ生きて戻ってこられないかもな。」


一瞬、喧騒が遠退いたように思えた。

だがそう感じたのは俺だけだったようで、目の前の会話は淡々と続く。


「縁起でもねぇことを言うんじゃねぇよ。」

「だってなぁ、あんな綺麗な嫁さんもらっちまったんだぜ?」

「それでばちが当たるって言いたいのか?」

「いいや。」


ケントの頬がほんのりと、赤い。


俺やマルコと違って、酒に弱い男だ。

同じペースで飲めば、当然そうなる。

そろそろこの辺で切り上げた方がいいだろう。


それにしても今日はやけに静かだ。

周囲ではいつものように、パイロット仲間が酒盛りをやっているはずなのだが…


そう必死に意識を違う方へ違う方へと導こうとするものの、耳はケントの声をしっかりと捉えて離さない。




「ジーナと結婚出来たんだ、一生分の運を使い果たした気がするんだよ。」




「結局は幸せボケか…大丈夫だ、お前は無事に戻って来る。だから安心して嫉妬した野郎共に殴られろ。」

「ひでぇなぁ、マルコ。」


お前の拳が一番重そうだ、なんてクスクス笑っていたケントがふとこちらを向いた。


「なぁ、フェラーリン。お前もそう思うだろう?」

「…あぁ、そうだな…」





ひどい話だ。

(きっと先に逝くのは俺だろう)
(それくらいの救いはあってもいいはずだ)


(だがケントは、戻って来なかった)


2013.9.27

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嘘つき、ロンリー。