慰労&感謝祭

この想いよ、届け!


「勝負だ、アシタカぁっ!」


そんな叫びにも似たケントの声に、一瞬で周囲の視線が集まった。

そして誰とはなしに「あぁ、もうそんな時間か…」と呟く。


「時が経つのは速いなぁ…」

「ではそろそろ休憩にしようかの。」

「そうしますか…おーい、みんな。お茶にしよう。」


すっかり時計代わりにされているが、無理もない。

何度となく繰り返される勝負、その結末はいつも決まっていた。


どうせまたアシタカの勝ちだろう、と。

一向に懲りる様子のないケントに、村の者達は一様に苦笑を漏らした。


「今日は何をするのだ?」


そんな中、毎度相手をさせられるアシタカはしかし、平然とケントの宣戦を受け入れる。

むしろどこか嬉しげな表情を浮かべ、「ぐっ…その余裕も気に食わねぇ!」とケントをますます激昂させたが。


「お前なんぞに可愛い妹を渡せるか!」


ケントがアシタカに勝負を仕掛ける理由、それは諸々を含めて最終的にはその一点に帰結する。


その可愛い妹であるカヤがどこからか、期待の篭った目でこちらを見ているのをケントは感じていた。

そして待っているのはアシタカの勇姿だということも、残念ながらケントは知っていた。


(カヤ…!今、兄ちゃんがその目を覚まさせてやるからな…!)


「刀か弓か組み手か…昨日は駆け比べだったか?」

「いくら個人の能力が高くても相棒と呼吸が合わなければ意味がない…という訳で今日は乗馬だ!」


向こうにアカシシを二頭、待たせてある!とアシタカの返事も待たずに歩き始めたケント。

勿論、後に続くアシタカが「確かに今日は遠乗り日和だ」などと考えていたことに気付くことはなかった。






この想いよ、届け!

(兄の心、妹知らず)
(友の心も友知らず?)


2013.10.3

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嘘つき、ロンリー。