慰労&感謝祭
上手くいかない関係。
「ハクには会って行かないのか?」
「あー…。」
ケントは考えるそぶりを見せたが、明確な答えを返すことはなかった。
ケントは、自由な男だ。
突然、湯屋に顔を出したかと思ったら、次の日には何も言わず忽然と姿を消す。
長いこと顔を出さないことなどざらで、よく死亡説が噂されるぐらいだ。
当の本人は、そんなことまったく気にしていないようで、気の向くまま今日のように湯屋にやって来ては、また何処かへ旅立つ。
「あっちは、おまえさんに会いたがってるぞ。」
「へぇ。それは嬉しいねぇ。」
長い付き合いだが、ケントの真意を読み解くのは難しい。
人当たりの良い笑顔と、飄々とした様は人を寄せ付けるが、心根は何を考えているのか、さっぱりわからない。
「…さて、行くとしますか。」
「なんじゃ、結局会っていかんのか。」
「小言は、聞きあきてるんでね。」
重い腰を上げて、気だるそうに伸びをするケント。
荷を担ぎながら軽口を叩くその表情はいつもと変わらない。
「それに……会うと別れるのが名残惜しくなるだろ?」
「おまえさん…」
「じゃあ、またな。爺さん。」
こちらを振り返ることなく、ひらひらと手を振ってケントは出って行った。
次に、ケントが此処を訪れるのは、いつになるだろうか。
「…もう、行ったぞ。」
「ありがとうございます。」
「そんな処で立ち聞きせんでも、おまえさんも声を掛ければ良かろうに。」
「いえ…。私は、ケントの元気な姿を見れれば十分です。」
少年の表情は、変わらない。
いつも笑っているケントと無表情なハク。なんとも対象的な2人だ。
「仕事があるので、戻ります。」
そう告げて、足早に少年は帰って行く。
「もどかしいの…。」
後、何回このようなことを繰り返すつもりだろうか。
不器用な2人のあの様子では互いの道が重なるのは、まだまだ先の話になりそうだ。
上手くいかない関係。
(歩み寄るってことを知らんのかね。最近の若造は。)
2013.10.1
written by 楓音ツキ
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嘘つき、ロンリー。