慰労&感謝祭

キャラじゃないけど。


この城の主人の帰宅と、共に入り込んできた外気と一緒に、香った鼻を突く甘い香りに思わず眉を潜めた。


「あれ?ケント来てた「今すぐ、風呂に行け。」」


触れようと近づいてきたハウルの言葉を遮りながら顔を押し返し、厳しい目で一喝すると綺麗な青い瞳を見開く。

そんなハウルなどお構いなしに、背中を押す。


「ケントが一緒に入ってくれるなら。」などと、馬鹿げたことを言う優男に、無言で足蹴りをかまして、浴室に押し込んだ。


扉越しに、乱暴だな…。と、ぼやくハウルの声を聞き流せば少しの静寂の後、浴室にシャワーの流れる音が響く。

浴室に向けていた視線を廊下へと向ければ、一部始終を見ていたマルクルが心配そうに、こちらを見つめていた。


「マルクル。後で洗濯を頼む。」

通り抜け様に、頭を撫でれば後ろ背に元気な声で二つ返事が返ってきた。











「お待たせ。ケント」

甘い声と、ふわりと鼻をかすめる香りに誘われるように振り向けば、ほんのりと白い肌を赤く染めたハウルの姿。

ご自慢の金髪から、雫が滴り落ちて肩を濡らしていた。


「おまえ、髪ぐらい乾かせよな。」

呆れながらも自然と、ハウルの髪に手を伸ばす。

大人しく、髪を拭かれるハウルと至近距離で視線がぶつかった。

楽しそうに輝くその瞳は、きっと何もかもお見通しなのだろう。


「気はすんだ?お姫様」

「……姫って柄かよ」

「ケント。」

更に詰められた距離。
鼻をかすめた香りは、慣れ親しんだもの。

たった、それだけのことだ。

「ただいま。」

帰宅のあいさつと、触れるだけの口づけ。

「……あぁ。」


それだけで、素直になれる。





キャラじゃないけど。


(知らない香りに嫉妬した…それだけのこと。)


2013.9.28 written by 楓音ツキ

*前次#

戻る

嘘つき、ロンリー。