重隆の幼馴染03
玄兎が姿を消して、しばらく。
チーム内で何度か「六鬼會を抜けたんじゃないか」という噂が持ち上がったものの、その度に重隆は「ありえねェ」と切り捨ててきた。
実際、重隆にとってそれは有り得ないことだった。
玄兎が自分に黙ってチームを抜けるなど、絶対に。
が、玄兎の姿が最後に目撃された時、『真木』と一緒に居たらしいという話を聞いた瞬間、その自信はあっさりと揺らいだのだった。
(お前も、『本物』がいいのかよ…)
お前は、お前だけは、違うと信じていたのに―…
…少々拗らせてしまった重隆は思った通り、なかなかの荒れっぷりだったらしい。
おかげでチームの内にも外にも『間違いなく京谷の弟』と知らしめ、俺は戻ってきて早々「二度と黙っていなくならないでくれ…!」と他メンバー達から懇願されてしまった。
この一週間の間、具体的に何があったのか聞くのが怖い。本当に怖い。
ちなみに携帯の方は未だ怖くてオフ状態ですが、それは後々重隆自身に処理させようと思っています。
「でもまぁ、良かったよ…真木クンが思い直してくれて。」
「チッ…マジで何がやりたかったんだ、あのヤロウ…」
「あれ?お前、知らねぇの?」
「あァ?」
不機嫌そうにガジガジとストローに噛み付く重隆に、思わず首を傾げた。
ほんの一時間前に解放された俺だが、「後でまた連絡する」と言われただけで何の説明もなかった。
まぁ、その辺りの詳しい事情は、誘拐犯との交渉さながら真木クンと直接話していた重隆に聞けばいいか…と思って、特に気にしてはいなかったんだけど。
「知るかよ。あのヤロウ、何かゴチャゴチャ言ってきやがってよ…」
「例えば?」
「あ?例えば、お前をチームから抜けさせろ、とかよ。」
「それから?」
「お前はゾクには向いていない、とか。」
「他には?」
「お前のことが好きならもっと大事にしてやれ、とか。」
「……………」
とりあえず、最後のは聞かなかったことにしておこう。
というか重隆自身、その言葉を口にして何か違和感を覚えないのだろうか。
ついでに急に黙り込んだ俺にも何とも思わなかったらしく、重隆はその後も饒舌にべらべらと話し続け、
「あんまりゴチャゴチャうるせェからよ、オメェは何だ?玄兎の保護者のつもりかよ?って言ってやったぜ。それとも惚れてんのか?ってよ。」
「え」
「そしたら真木のヤロウ、なんか一人で勝手に納得しやがって……」
確実に雲行きが怪しくなっていくのを感じながら、俺は重隆からそっと目を逸らして自分のジュースをブクブクと泡立てた。
と、不意にテーブルの上に置いてあった重隆の携帯が鳴り出す。
画面に表示された相手の名前を見ると重隆は舌打ちし、電話に出た。
「オメェ、今度は何の……あ?あー、いるけどよ……あ?」
そしてもう一度舌打ちし、「お前、携帯の電源入れてねェのか」と言いながらそれを俺に差し出した。
『釣りは好きか?』
さて、この誘いを俺はどう解釈したらいいのだろうか?
想定外の、終着点。
(そしてこの後、恐る恐る携帯の電源をオンにした瞬間)
(真木クンからの着信もなかなか恐ろしいことになっているのでした)
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嘘つき、ロンリー。