Bow-WoW!
#11
往診の帰り道、最初にそれに気が付いたのはニナだった。
路地の片隅に蹲ったその姿は一瞬浮浪者にも見えたが、辺りを漂う濃い鉄の臭いがそれを否定していた。
そして看護師の強い訴えにより医院に連れ帰った男は、思ったより若く、思ったより傷が深かった。
(無数の刀傷に打撲が少々…一応チャド警部に連絡しておくべきか。)
ここらではそう珍しくない怪我だが、眠るその顔には見覚えがない。
タグ付きでもなさそうなこの余所者は、一体どんな厄介事に巻き込まれたのか。
「うっ……?」
「…目が覚めたか。」
ニナに電話を頼もうと、腰を上げたところで聞こえてきた唸り声に振り返る。
ぼんやりと室内をさ迷っていた視線がこちらへと向けられた。
「あんた……医者、か…?」
「あぁ、怪我したお前を見つけてここに運んだ。」
「そ、か…」
病院にいることで安心したのか、男はそっと息を吐き出す。
「名前は?言えるか?」
「玄兎、だ…大丈夫、意識ははっきりしてる…」
「そうか。なら何があったか覚えているか?」
「あぁ…いつも通り、グンジ達と適当にぶらついて……途中、はぐれちまって…そしたらシキの野郎が……くそっ!あの野郎…!」
当然のように出てきた名前はどれも、生憎聞き覚えがなかった。
そして話す内に色々と昂ってしまったのか、勢いに任せて身を起こす男。
「まだ寝てろ。傷が開くぞ」という忠告も聞かず、ベッドから下りようとさえする。
「っ…なぁ、アンタ。ビトロにはもう、報告したか?」
「いや…それは、」
お前の上司か何かか?
そう問い返すより先に部屋の扉が開き、ニナが顔を覗かせた。
「先生?薬を取りに患者さんが…あ、さっきの人!目が覚めたんですね!良かった!」
パタパタと駆け寄るニナに一瞬呆ける男。
かと思えば次の瞬間顔を引き攣らせ、重傷とは思えぬ俊敏さでニナから逃げるように飛び退いた。
「お、おい!ここどこだよ!?ヴィスキオじゃねぇのか!?」
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何かが、噛み合わない。
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嘘つき、ロンリー。