犬を、拾った。

里親を探した。


便利屋が来た、と。

そう告げに来た看護師と入れ違いに病室を出れば、背後から聞こえてくる悲鳴のようなもの。


それは外まで届いていたらしく、医院を出ると苦笑混じりのウォリックが待ち構えていた。

ニコラスの姿はない。


「本当、医者を怒らせると怖いねぇ。まだ薬抜きなわけ?」

「いや、代わりに強力な薬を置いてきた。」

「へ?」


女性恐怖症、なんてきっとこの目の前の男には理解出来ないことだろう。

それ以上の説明は放棄して「それで何だ?」と用件を促せば、ウォリックは少し不思議そうにしながらも本題へと移る。


「例の捨て犬の件なんだけど。」


捨て犬。

その一言が何を指しているのか、瞬時に理解するほど慣れてしまった自分にうんざりする。


あれはいつだったか、チャド警部が吐き捨てた表現をウォリックが気に入り、以降面白がって使うようになったものだ。




『確かによそ者の出入りはいくつかあったけど、んなもんいつものことだし?俺が見る限り「それらしい人間」は一人もいなかったかなぁ。』

『つまり、何だ?そのヴィスキオってのは、あれから自分らが捨てた「死体」の生死確認にも来てねぇって訳か?』

『いや、チャドさん。もう「死体」って時点で死んでるから。』

『あぁ?揚げ足取るんじゃねぇよ。それに結局「死体」は生きてたじゃねぇか。』

『生死自体はどうでも良かったんでない?ただ戻って来れないように遠くまで捨てに来ただけ、とか?』

『んな犬や猫じゃあるまいし。』




「……あれはもういいと言ったはずだが…何か分かったのか?」

「いんや?残念ながらそっちは相変わらず収穫なし。ただモンローさんが、『処分に困ってるようならうちで引き取って飼う』ってさ。」

「総代が?」


それこそ『犬や猫じゃあるまいし』な物言いに、ふと悪戯っぽく笑う四大父の姿が脳裏を過る。

明らかに面白がっている節を感じ取り、舌打ちすれば、ウォリックは肩を竦めてみせた。


「まぁテオ先生も、ボランティアでいつまでも面倒見るって訳にはいかないデショ?」




犬の、里親を探した。

(それも一つの選択肢。)

*前次#

戻る

嘘つき、ロンリー。