せんせいのわんこ

先生とわんこ2


最近、犬を飼うようになった。


毛並みは上等。

躾も施されており、命じれば番犬もお使いもきっちりこなす。


おかげで便利屋を雇う必要もなくなり、いい拾い物をしたと一人満足していたのだが、


「…歩きづらい。」

「っ、すんません…っ」


周囲からはクスクスと笑い声、時折誰かが「かわいい」と漏らした。


勿論、俺のことではない。

謝罪を口にしつつも、俺の右腕を離そうとしない玄兎のことだ。


思わず溜息を吐いた。


「玄兎…」

「も、もう少し…せ、せめてあの角までお願いしますっ」


玄兎を伴った往診の帰り。

病院までの近道と称し、玄兎のリハビリがてら娼館通りを通ってみたら、この有様だ。


腕にしがみつき、顔も押し付け、目はほとんど閉じた状態。

事情を知る娼婦達が笑う。


(これではリハビリにならんな…)


ふと女達に紛れ、野太い男の声が聞こえた。


「いやぁ、幼女に青年とは多趣味ですねぇ先生。」

「うちの事務所も若い奴が結構入りましたよ、どうです?」


途端に上がる下品な笑い声。

組の名前は忘れたが、以前勧誘に来たチンピラどもだ。


無視して先へ進もうとした瞬間、右腕の圧迫がなくなった。


「おい。」


チリッと、空気が変わる。


「誰に向かってナメたクチ利いてんだ?」

「な、何だてめぇ!」


先程の怯えようから一転した玄兎の様子に、チンピラどもは一瞬気圧されたようだった。

一歩二歩と後ずさるその姿がいつもの玄兎と重なり、何だか奇妙な感じがした。


「死にてぇのか?あ?」

「や、やれるもんならやってみろや、この×××!」


チンピラの罵声に怒るでもなく、玄兎はただ獰猛に笑う。


そして、飼い犬は文字通り『飛び』掛かった。





お待ちよ、doggie

(男相手になら強気になれるんだがな…)
(また溜息を一つ)


--------------
アンケートより。
リクエストありがとうございました!


*前次#

戻る

嘘つき、ロンリー。