ロバのゲーム
last
「赤音さんの、手術が終わったらしい…」
最後の方は堪えきれず、声が少し震えてしまった。
相手はそれに気付かなかったのか、「へぇ、良かったじゃん」と適当に返ってきた言葉に、誤魔化すように溜め息を吐き出す。
「…オマエなぁ、結果ぐらい聞けよ。」
「あー?必要ねぇっしょー。もしダメだったんならお前、絶対今頃んな冷静じゃねぇだろうしー。」
「………」
もし、駄目だったなら。
なんてあり得たかもしれない、想像したくもなかった最悪の結末。
玄兎が軽々と口にするのを聞いて、ようやく肩の力が抜けていくように感じた。
玄兎の「とっておき」は、流石とっておきと言うだけあって、数回繰り返しただけで目標の手術費用をあっさり稼ぎ出した。
そして玄兎の提案で、その内10分の1にも満たない額をイヌピーに直接手渡し、残りは匿名の寄付があったということにしている。
玄兎曰く「融通の利く先生」が上手くその辺の手配をしてくれたらしい。
『全額お前が出したんじゃあ「どうやって集めたんだ?」ってなるし、かと言って全額寄付じゃ相手が気になって仕方ねぇだろ?だからバランスが大事なんだ。』
『バランス?』
『知り合いからの必死の十数万と、知らねぇやつからのポンと数千万。どっちに価値がある?どっちに関心が行く?』
玄兎の目論見通りなのか、寄付に対して勿論目一杯感謝され、その旨が綴られた手紙が宛てられたが、それ以上深い追究はなかったという話だった。
対して自分には―…
『…色々ありがとな、ココ。』
その瞬間、ちくりと胸が少し痛んだのは罪悪感だろうか。
今更後悔はしていないが。
「でも、本当に良かったのかよ?」
「何がー?」
「今回の金、必要経費以外ほとんど全部オレが使っちまっただろ。後から返せって言っても返せねぇぞ?」
「言わねぇし、いらねぇし。つかお前から取り立てるぐらいなら、次の仕事考えた方が愉しいっつーの。」
そう吐き捨てながらページをめくる玄兎。
と、不意に玄兎の携帯が鳴った。
すぐに鳴り終えたそれはどうやらメールだったらしく、玄兎は手に取ると適当に画面に視線を走らせて、次の瞬間「お、」と小さく声を漏らした。
「先生からだわ。」
「あ?」
「『赤音さん』に掛かる今後の費用、概算頼んでたのが出来たっぽい。」
「今後?」
「お前だってまさか、手術したらハイ!終わり!なんて思ってねぇだろ?むしろ、俺達の戦いはこれからだ!って感じ?」
「…それ、打ち切りフラグだろ。」
自分で自分の言葉に笑う玄兎に呆れてしまったものの、いつの間にか自分もつられるように笑っていることに気付く。
「まぁ、お前は別にここで下りてもいいぜ?俺はこのままゲーム続けるけど。」
「は?やるに決まってんだろーが。」
改めて覚悟が決まった。
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嘘つき、ロンリー。