下っ端くんは潜入捜査中!
三途春千夜
「ぉわっ!?」
突然事務所の扉が開いた、かと思えばほぼ同時に悲鳴を上げながら転がり込んできた男。
当然そこに視線が集まるものの、転んだ拍子にどこかぶつけたのか、当の本人は呻き声を漏らして蹲ってそれどころではないらしい。
なので、標的は男を蹴り飛ばして入ってきた三途に変わる。
「何だ?ソイツ?」
「拾った。」
そう笑って答えた三途は妙に上機嫌だったが、知りたいのは事の経緯ではなくその素性だ。
九井が舌打ちする。
初めて見る顔で、とりあえず直属の部下ではない。
どこにでもいそうな若いチンピラ風で、だが何らかの「トラブル」なら後処理云々を考え、事務所ではなくいつもの倉庫の方に連れて行くはず。
要するに害はない、と鶴蝶は判断した。
「コイツ、しばらくここに出入りさせるから。他の奴らにもそう言っとけ。」
「え!?」
三途の宣言に声を上げたのは、ようやく復活したらしい(が、未だ床に座り込んでいる)男。
こちらも何も聞かされていないのは同じだったようで、呆然と三途を見上げた後、慌てたようにその足に縋りついた。
「おおお俺が一体何したって言うんですか!?まだ何もしてませんよ!?」
ただ事務所の出入りを許可されただけだというのに(むしろ出世したも同然で喜ぶならまだしも)挙動不審にも程がある、と九井の視線は未だ厳しい。
別に三途に言われたからという訳ではないが、とりあえず写真でも撮って今ここにはいない他幹部にも回しておくか。
そう思い携帯を取り出して構えようとした九井に、ハッと男が気付いた途端、バッと手で遮るようにその顔を隠した。
「おい?」
「しゃ、写真はお断りしてます。事務所を通して下さい。」
「…あ?」
「うちの所属なら、ここが事務所じゃねぇのか?」
「そうですけど!あ、じゃあアレです!アレ!魂!魂が抜けちゃうんで!写真怖い!」
「いつの時代の人間だよ…鶴蝶、ちょっと押さえてろ。」
「分かった。」
「ちょっっ!!?」
その後も男の抵抗は無駄に続き、結局「もう勝手にしろ…」と疲れ切った九井が吐き捨て「ありがと…ございます…」と半ば瀕死状態の男が勝ったと思われた瞬間。
「じゃあ撮るぞ。」
「っ、あぁっ!?」
パシャ、と鶴蝶の手によりいとも簡単に切られたシャッター、そして無情にも一斉送信されるメール。
崩れ落ちる男は元より、九井の顔が心底複雑そうに歪む。
「なぁ?コイツ、面白ぇだろ?」
愉しげな三途の言葉は残念ながらどこからも同意を得られず、ただ事務所の外で待機していた部下達が静かに合掌するのだった。
三途春千夜の機嫌
(無期限変動要注意)
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嘘つき、ロンリー。