下っ端くんは潜入捜査中!

灰谷兄弟


「何だっけ、コレ?」

「アレだろ、三途のお気に入り。」

「あー、そうだったそうだった。思い出したわ。」


そう笑いながら軽く応える兄に「本当に思い出したのか?」という疑問が浮かんだものの、とりあえずそれは飲み込むことにして。


代わりに竜胆は蘭の隣、蘭にがっちり肩を抱かれて顔を青ざめさせている男に視線を移した。

そして、今にも吐きそうな五秒前、といったその様子に思わず眉を顰める。


「兄ちゃん、飲ませすぎ…その内吐くぞ、ソイツ。」

「あ?まだ何もしてねぇよ?今会ったばっかだし。これから飲みに行くつもりだけどォ。」

「「え、」」


声が重なり、つられて二人顔を見合わせた。

が、引っ掛かった箇所はそれぞれ違ったらしい。


「酒も入ってねぇのにその顔色かよ…」

「飲みにって…俺、これから仕事なんすけど…?」

「真面目だなァ…よし。そんなイイ子チャンには、この優しいオニイサマが奢ってやろう。」

「いやだから」

「仕事って何?」

「…ここから少し入ったところの、×××って店っすけど。」


今度は兄弟で顔を見合わせる。

オマエ、知ってる?いや、知らね。


「それ、うちの系列店か?」

「というより、下請けの下請けの下請けといったところっすかね…?」

「まぁ、何でもいいわ。ところでオマエ、名前何だっけ?」

「タナカです。」

「んじゃ行くかァ、玄兎。」

「名乗らせた意味は…?って、え?本当に?本当に来るんですか?」

「そこ、酒は飲めんだろ?それに奢ってやるって蘭ちゃん約束したしィ?」

「いや約束も何もそっちが勝手に…っていうか、間違っても『梵天』の幹部様が来るようなとこじゃないんで!店中騒ぎになりますよ!?」

「竜胆も行くっしょ?」

「まぁ…兄ちゃんが行くんなら。奢りだし。」

「兄弟仲が良いようで何よりですね!親睦は余所で深めて下さい!」

「まーまー。オマエも仲良くヤろうぜ、キョウダイ。」

「兄ちゃん、言い出したら聞かねぇからな…ってわけで諦めろ、タナカ。」

「玄兎です!!」


それはまじで吐くことになる五時間前のことだった。




灰谷兄弟の誘惑

(ただただ迷惑)

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嘘つき、ロンリー。