下っ端くんは潜入捜査中!
鶴蝶
「玄兎?」
無意識に漏れ出たその声が耳に届いた訳でもないだろうに、相手はタイミング良く振り返った。
目が合ったため、何となく片手を上げてみせると、驚いたように目を丸くした玄兎は慌てて受話器を置いて公衆電話ボックスから出てきた。
そして、それが駆け寄ってくるのを待ちながら、鶴蝶は呆れたように溜め息を吐き出した。
「また三途に携帯でも取られてんのか?」
「は?」
近くまでやって来たところに挨拶もなくそう投げ掛ければ、玄兎は一瞬間の抜けた声を上げ、すぐに「そ、そうなんすよ。はい」と何度も頷いてみせた。
以前逃げ出したせいで三途の執着は余計酷くなってしまったらしく、最近何かと玄兎の私物を取り上げては人質のようにしていると聞いた。
「大変だな、オマエも。」
「鶴蝶サンからも、三途サンに返すように頼んでもらえませんかね…?」
「オレが言ったところでどうせ無駄だぞ。」
「いや、もうほんと、鶴蝶サンだけが頼りなんですよ…」
どこか遠い眼差しの玄兎に同情し、出来ることなら何とかしてやりたいのは山々だったが、こればかりは鶴蝶にもどうしようもない。
あの三途が言うことを聞く相手と言えば、我らがボスぐらいのものだ。
そう鶴蝶が伝えれば玄兎は少し考え込んだ後、恐る恐る、だが意を決したように顔を上げた。
「じゃあ、その…ボスってどんな人なんですか…?」
「あ?」
何を今更…と言いかけて、ふと鶴蝶は今更ながら玄兎の立場を思い出す。
(…だけど、まぁ……)
「そういやオマエ、ボスとの顔合わせはまだだったな。」
「まだ、っていうか俺下っ端すからね。本来こうやって鶴蝶サンと話すのも恐れ多いぐらいで…」
「××町にある事務所は分かるか?」
「え?はぁ…あそこなら何度か灰谷サン達の仕事の手伝いで行ったことが…あ!三途サンもですけど、あの兄弟もどうにかして下さいよ!」
「だからそれ、オレじゃなくてボスに直接言ってみろ。」
「、え、?」
「多分、今この時間ならあそこにいる。オレは予定があって行けねぇが、オマエのことは連絡して伝え…って、何だ?その顔。」
「いや…まじでボスのこと、俺なんか教えてもらえるなんて思ってなかったもんですから…」
まぁ正直、ボスに直談判したところで何の解決にもならないだろうが(下手すれば悪化するかもしれないが)、今後のことを考えると顔合わせをしておく良い機会かもしれない。
と、鶴蝶はそう思っただけだった。
「ありがとうございます。俺、ちょっと行ってみます!」
「おう、当たって砕けてこい。」
「はい!」
【鶴蝶の油断】
(というか警戒するだけ無駄?)
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嘘つき、ロンリー。