黒い楽園へようこそ
極楽を謳う
回収した「カルテル幹部の息子」について、とりあえずありのまま上に報告したところ、返ってきた反応は予想通りあまり芳しくないものだった。
本命の父親にはむざむざ死なれた上に、警察の後手に回って残りメンバー全てを掻っ攫われたことも気に食わなかったらしい。
ただ、その警察に関して一つ収穫があった。
売人を装ってグループに近付いてきたという、潜入捜査官の存在。
国内でもそのような捜査手法がすでに用いられていることも知らなかったが、何より驚いたのは麻薬カルテルの人間さえ欺いてみせたその手腕だ。
更には正当防衛に見せ掛けて殺しにかかってきたというのだから、そこらの下手なやくざ者よりたちが悪い。
『そう言えば、前にもどこぞの詐欺グループがトップを射殺されて幕引きしたんじゃなかったか?』
『あぁ、あの妙に小賢しいガキばかり集めてた…あれには清々した。』
『何他人事みたいに…明日は我が身だ、何か対策を講じねぇと。もう少し詳しい情報が欲しいな、あちらさんに誰か探りを入れさせろ。』
『そのルイって言ったか?殺したはずの獲物が生きてたら、流石に何かしらの動きがあるだろ。しばらく適当に泳がせて様子を見るってのは?』
『それがいい、よそもんが餌ならいざという時も簡単に切り捨てられる。なぁ、玄兎?』
戦地の地雷探知犬。
炭鉱のカナリア。
何にせよどうせ切り捨てられるのはその「使い手」ごとだろうと思いつつ、それらを飲み込んでただ頭を下げた。
そして、巻き添えを食らう前に適当な理由を付けて処分することを決めた。
自力で動けるようになった頃に手錠を外しておけば勝手に逃げ出す。
あとはそれを追って始末するか、何ならそのまま逃げ切ってしまっても構わない。
元はと言えば何の関係もない相手だ、母国に帰ってくれれば余計な手間もなくなる。
だが、一向に部下から期待する報告を受けることはなく。
『…生きる理由が欲しい。』
いつかの質問にそう目を伏せて応えた男は、ルイは何故かまだそこにいた。
内心舌打ちする。
「…今日は退院後の話をしようか。残念ながら拒否権はないんだけどな。」
【極楽を謳う】
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嘘つき、ロンリー。