もしかして:喜劇?

半間とモノホン死神


※原作軸未来。
※関東事変後。逃亡中の話。











「歌舞伎町の死神」などと呼ばれていた半間の他に、実はもう一人「自称死神」が居た。

とはいっても、その男がそれを名乗ったのは後にも先にもただ一度きりだが。


それは稀咲の取り巻きの一人で、どこにでも居そうな金髪リーゼントに特攻服という出で立ちだったせいか、正直名前も顔もろくに覚えていない。

ただ何となくその存在を半間が覚えていたのは、何となくそのネーミングセンスが気に入っていたからだ。


『奇遇だな、俺も死神なんだ。「ダブル死神」ということで仲良くやろう。』


だから、次に再会した時も何となくそれと気が付いた。


どこにでも居そうな黒髪にパーカー、ジーパンという出で立ちで、玄兎と名乗った地味な男。

印象は随分と異なっていたが、言われてみればそんな名前だったような気もするし、何よりその言葉が決め手だった。


「奇遇だな、俺も逃亡中なんだ。『ダブル逃亡者』ということで仲良くやろう。」

「ブハッ!!」


突然噴き出した半間を不思議そうに見つめて首を傾げる「自称死神」、いや今は「自称逃亡者」の玄兎。

「どうした?俺は何かおかしなことを言ったか?」と至極真顔で問い掛けられ、半間は「いや、オマエ頭オカシーだろぉ?」と答えたかったが、生憎その笑いはなかなか止まらなかった。


そして、ようやくそれが落ち着いた頃には、もうすっかり了承を得た気になった玄兎が、当然のように半間の隣を陣取ってあれやこれやと話し掛けていた。


「それで、逃亡生活はどんな感じなんだ?」

「あー…なんかつまんね。もう飽きてきたわ。」

「だろうな。楽しいとか、もっと続けたい、なんて答えは今までほとんど聞いたことがない。」

「あん?分かってんなら聞くなっつーの。」

「分からないから聞いたんだ。」

「んだよ、ソレ?」


確か稀咲が死ぬ前のおよそ一週間も、玄兎はこうして同じように当の稀咲から疎まれるほどその傍らに四六時中べったりと張り付いていたように思う。

そのせいで、チーム内でも大して目立つ存在でもなかった癖に共犯と見なされ、「逃亡者」になる羽目になったのだろう。


だが、それほど稀咲に執着していた割に玄兎は再会してからこれまでの間、一切稀咲のきの字も口にしなかったが。


(…ま、どうでもいいけどなぁ。)


別に玄兎と思い出話がしたい訳でもない。

ただ退屈を紛らわすことが出来れば、それだけで良かった。


「あ、CDショップ。寄ってもいいか?」

「ひゃは!そういうオマエもしっかり飽きてんじゃねぇーかぁ?」

「いや、ミュージックは全く飽きない。」

「ソッチじゃねぇし。」

「もしかして、何かやりたいことでもあるのか?だったらそれに付き合う。」

「あー?」

「何かないか?死ぬ前にやりたいこと。」

「…あー、別に何もねぇわ。つか、ノリにノって演歌とか聴いてるオマエ見てる方がまだ笑えるかもなぁ?」

「じゃあ、やっぱりあのCDショップに寄ろう。」


そう言いながらどことなくウキウキと軽い足取りで店に向かおうとする玄兎の後に、笑いながら半間が続く。


二人で行動するようになって、そろそろ一週間が経過。

果たして玄兎が半間の前に現れたのはタイミングが良かったのか、それとも悪かったのか。

どちらにしても恐らくこの逃亡生活ももうすぐ終わる、と半間はそう何となく感じていた。






似たもの同士、仲良くやろう。


監査部への報告を終え、通話を切った。

これでミュージックを視聴できるのも後少しかと思うと名残惜しいが、仕方ない。

次回を楽しみにしておこう。


(そう言えば今回の調査対象者、何となく前にも見たような気がするな…)


その両手の甲に彫られた、「罪」と「罰」の文字が印象的だった。

確か「死神」と呼ばれていた人間で、その時も何となく親近感を抱いた覚えがある。


「……まぁ、仕事だから仕方ないか。」

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嘘つき、ロンリー。