もしかして:喜劇?

小一郎と同級生


※『アザ/ーズ』。
※αな小一郎とΩな夢主の話。








「実は俺、Ωなんだよねー。」


いつもの軽い調子で突然告げられたそのカミングアウトに、オレは思わず飲んでいた牛乳を噴き出した。

「ちょ、大丈夫?キュウちゃん?」と玄兎が背中をさすってくれるが、誰のせいだと思ってやがる!と怒鳴ってやろうとして、ますますむせ返ってしまった。


そして、ようやくそれが落ち着いてきた頃、注意深く周りを見回して声を潜める。


「お、おい…そういうことはあんまデカイ声で言わねぇ方が…」

「えー?大丈夫っしょ?いくら男ばっかの鈴蘭でも、俺なんかをどうこうしようとするやつなんかいないってー。」

「…………」


そう言ってケラケラと笑う玄兎は、いつもすぐ側にいる小一郎がαであり、隙あらば玄兎を「どうこうしよう」と狙っていることを知らない。

まぁ玄兎に限らず、他のやつらにとっても小一郎は無口無表情でかなり分かりにくいらしいが、オレは知っている。

オレだけは、知っている。


「…なぁ、玄兎。」

「うん?」

「その、オレを信用してそんな告白をしてくれたのは嬉しいが…今の話、絶対小一郎にはすんなよ?」

「え?でも、」

「いいな?絶対だぞ!これはお前のために言ってんだからな!?」


とりあえず今、この場に小一郎がいなくて本当良かった、と心底そう思う。

ついでに頼むからもうしばらくトイレから戻って来るなよ…!と必死に願った。


とにかくこの話題はここで切り上げ、話を元に戻さなければ。


(…つか、元々何の話してたっけ?玄兎のカミングアウトがあまりに衝撃的過ぎて…)


確か、ここ二日間学校を休んでいた玄兎を心配した小一郎が、オレの制止を振り切って昨日玄兎の見舞いに行ってしまったという話だった、はず。

後を追おうとしたものの小一郎の足は速く、そして残念ながらオレは玄兎の家を知らなかった。(…小一郎のやつ、玄兎の家を知ってたのか?いつの間に?)


それで、小一郎が何か早まった真似をしなかったかと翌日の今日、登校してきた玄兎に恐る恐る話を聞こうとしたら―…



『実は俺、Ωなんだよねー。』


「……もしかして、お前が学校休んでたのって…?」

「そうそう。それがうっかり薬切らしちゃってるの忘れててさー、今回まじでヤバかったわー。」


あ、キュウちゃんにも心配かけたみたいでごめんね?と首を傾げる玄兎に、オレは開いた口が塞がらない。


小一郎は、αだ。


「それでコイチローくんがお見舞いに来てくれたんだけど…いやー、コイチローくんって改めてスゴいんだなぁって思ったよ。ホント。」

「!?」


スゴい?スゴいって何が?

いや、確かに小一郎は色々とスゴいやつだが、今の話の流れ的に、つまり…そういう意味で?


(あの野郎、とうとうヤりやがったのか…!?)


あれだけオレが「手順はちゃんと踏め」って言い聞かせてきたッつーのに…!

今の玄兎の言い方からするとそう悪い感触ではなかったようだが、それとこれとは話が別だ。


だって、Ωってアレだろ?ニンシン、とかしちゃったりするんだろ?

まだ恋人でもないのに、万が一の場合に小一郎はしっかり責任を取れるのか?


(……いや…いざって時はオレが、責任持って小一郎に責任を取らせてやらなければ…!)


そう少々鼻息荒く意気込んでいたオレは、その後に続いた玄兎の言葉をうっかり聞き逃してしまった。


「コイチローくんって、αなんでしょ?なのにヒート中の俺に顔色一つ変えないで、代わりに薬を買ってきてくれたんだ。ホント、スゴいよねー。」





雛形小一郎は凄い男である

(正直な話、もしかしたら「久太郎おじさん」と呼ばれる日が来るのかもしれないと、この時のオレは少し浮き足立っていた。)
(…疑ってホントに悪かった、小一郎…)

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嘘つき、ロンリー。