もしかして:喜劇?

三途と女衒


※原作軸未来(梵天)。
※αな三途とΩな夢主の話。










医学の進歩により薬やら何やらが開発され、ウン十年前からαやらβやらΩやらの区別はなくなった。

それらは今やすっかり歴史上の出来事で、学校の授業でいくらか触れるか、時々思い出したように映画など娯楽の題材に使われるかする程度に留まっている。


…というのは、あくまで表向きだけ。


社会の最下層の、さらにその底辺では今日もまた人知れず、一人のΩが無事『出荷』されていく。


「オマエ、ホントいつも上手いことやるよなぁ。」

「あぁ?」

「毎回『声掛けたらΩだった』?どういう確率だよ、それ?」

「知るかよ。」


まじ羨ましいわ、と同僚は笑うが、その視線はこちらの手元に固定されていて外れない。

俺はそれに構うことなく、受け取ったばかりの金を数えつつ、同じように笑い返してやった。


口では平等だの何だのと綺麗事を並べていても、こうしてしっかり需要があるのだから本当笑える話だ。


「なぁ、玄兎。何かコツとかあんだろ?ちょっとでいいからオレにも教えてくれよ?なぁ?」

「んなもんねぇよ、ああいうのは大体ニオイで分かる。」


しつこい同僚を鼻であしらい、適当にはぐらかしていれば、「マジか。天職かよ!」と返ってきた言葉に思わず一瞬手が止まりかけた。

ほんの一瞬、だがそれを凝視していた同僚は流石すぐさま異変に気付いたらしく、不思議そうに顔を上げた。


と同時に目を見開く。


「お、お疲れ様です…!」


バッと頭を下げた同僚に嫌な予感がして振り向こうとした瞬間、ガッと後頭部を誰かに掴まれ、そのまま強制的に頭を下げさせられる。

だが、ほんの一瞬見えた相手の口元はよく知ったもので、嫌な汗が背中を伝っていくのを感じた。


体感的には一時間、実際には一分と経っていないのだろう。

「さっさと失せろ」と追い立てられ、慌てて逃げ去って行く同僚の足が視界から消えてもなお、俺は頭を押さえつけられたまま。


「、ぉ、疲れ様です…」


辛うじて同僚に倣って口にした挨拶に、返ってきたのは嘲るような笑い声。

ついでにその手にグッと力が込められ、内心舌打ちした。


屈み込んだらしい相手が、スンスンとわざとらしく鼻を鳴らしながら俺の耳元にその唇を寄せる。


「ニオイで分かる、なぁ?」

「っ、…」

「はっ、確かにクッセェ、クッセェ…」


Ωクセェ。

と呆気なく他人の秘密を吐き捨てながら笑う『梵天』のNo.2に、抑制剤とクスリの特製ブレンドをキメているところを見られてしまったのはつい先日のこと。


同僚は何も知らず「天職だ」と笑っていたが、簡単な話がただ俺もそうだったというだけのことだ。


Ωを売るΩ。


「せいぜいナカマを売って役に立つんだなぁ?」


今のところ利用価値があると見逃されているのだろうが、それがなくなった時は一体どうなるのか?

なんて考えるまでもなく確実に地獄だ。


いつだったか、戯れに歯を突き立てられた項の痛みを思い出しながら、俺はされるがままそこを曝し続けたのだった。





カウントダウンは始まっている

(このざまを見て、「気に入られている」なんて巫山戯たことを言ったのはどこのどいつだ?)
(それはまるで、鼠を甚振る猫のように愉しげで、)

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嘘つき、ロンリー。