カズマとギルド職員02


『情けないですよ、カズマ!いつもの威勢はどうしたんですか!やはりここは景気付けに我が究極奥義、爆裂魔法を』

『あ、結構です。』

『交流を深めるためには共通の趣味趣向が必要だ…それが男同士となると…クッ、仕方ない!これもカズマのためだ!一肌脱ごう!二人で私の身体を存分弄べば』

『大丈夫です。』

『もーカズマったら本当しょうがないわねぇ!私がいないとてーんでダメなんだから!いいわ!この女神アクア様に全部任せ』

『間に合ってます。』


どこからともなく現れたポンコツトリオには丁重にご退場願い、何とか追い返した俺は気を取り直して一度大きく深呼吸をした。


…三人のおかげで何とか調子が戻ってきた、などとは口が裂けても言えないし言わないが。


『なぁ、白兎。』

『はい?』

『明日、もしヒマだったらさ―…』










「カンパーイ!」


カチャン、とぶつかり合うジョッキの音に俺はハッと我に帰った。

が、すぐに目の前に座る白兎の姿に再び意識が飛びそうになる。


いつものカウンター越しに向けられる営業スマイルではない、楽しげな満面の笑み。

果たしてこれは夢か、それとも幻覚なのか?


正直、昨日白兎を誘った後から今に至るまでの記憶が全くないので、可能性としてはそのどちらもありえるが。


(…いや、この際、夢でも幻覚でも何でもいい…俺は今、白兎とデートしている…!)


初デートが大衆居酒屋、というのが何とも言えない気もするが贅沢は言うまい。

それに、例え「今日は男だけで楽しみましょう」と笑う白兎が間違いなく男友達とのソレで、完全に意識されていないとしても、だ。


俺がデートだと思えばこれはデートである。


「それで、この後の予定はどうしましょうか?そう言えば最近、新しく出来たサキュバスの店がなかなか優良店みたいですよ。」

「ぶっ!?」


そう何とか自分自身を騙そうとしていた次の瞬間、デートにあるまじき発言に思わず噴き出してしまった。


というか、白兎の口からサキュバス。

危うく別のものも噴き出しそうになった。

当の元凶の癖して悪気なく「大丈夫ですか?」と首を傾げる白兎は本当可愛いなコンチクショウ。


「カズマさま?」

「っ、い、いやぁ…流石に今日はそういう気分じゃない、と言いますか何と言いますか…」

「え?」


まさか俺が断るなんて微塵も予想していなかったらしい白兎が目を見開く。

白兎の中で俺という存在がどうなっているのか、嫌でもそれが分かって少し泣きたくなった。


流石にそんな俺の様子を察したのか、「あ、そ、そうですよね!すみません!ちょっとお酒が入って浮かれてたみたいで…」と慌て出す白兎。


「今日はそんなことをするために俺を誘ったわけじゃない、ですよね?」


……おや?

辺りを窺うようにしながら、そっと声を潜める白兎の頬はうっすらと赤い。

勿論、酒が入ってるせいではあるだろうが、それだけではないようにも見える。


これはもしやワンチャン、イケるのでは…?


ごくり、と唾を飲み込んだ。


「大丈夫です。これでも口は固い方です。俺で良かったらいくらでも相談に乗ります。」

「…ん?」

「先程も言いましたが今日は男同士、とことん腹を割って話しましょう。」


相談?腹を割る?一体何の話だ??

足を開いてくれるなら大歓迎なんだが…と安定のクズ思考になりかけていると、白兎はもう一度周囲を見渡し、そしてこちらに身を乗り出した。


「本命はやはり、めぐみんさまですか?」






おーあーるぜっと

(ガチャン、とテーブルに倒れ伏せた音は喧騒に飲み込まれて消えた)


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嘘つき、ロンリー。