【趣味は、読書です。】05


「白兎さん、ですか?先程向こうに歩いて行かれるのを見ましたけど……ヒィっ!?」










逃げるように、どころか実際走って逃げていく隊員の後ろ姿に、堂上はふと我に返った。

反射的に引き止めようと右手を伸ばしたものの、当然のことながらそれが届くことはなく、ただ空しく終わる。


それほど自分は酷い顔をしていたのだろうか。

なんて思いはするものの、別に鏡を持ち歩いている訳でもない堂上には確認のしようがなかった。


そしていつもならそれを揶揄する白兎も、苦笑混じりに指摘する小牧も、生憎今はそのどちらも近くにいない。


そう、白兎も小牧もいないのだ。

全てはそこに起因する。


所用があって白兎の姿を探すものの見付からず、恐らくその動向を一番把握しているであろう小牧に尋ねたくとも何故かそれも見当たらない。

かといって他の隊員らに聞けば、やれ「あっちに行った」「こっちに行った」。


それら指示語を順に辿った結果が「振り出しに戻る」では、堂上でなくとも立腹することだろう。


全く、どこをほっつき歩いているのか。

用もない時には面倒なほど絡んでくる癖に、肝心な時にこれなのだから質が悪い。


いっそここらで止めるのも一つの手ではあったが、実際堂上の左手にある一冊の本がそれを許さなかった。


「…………」


しばしそれを見下ろした後、舌打ちのような溜め息のような小さな息をそっと吐き出して来た道を引き返す堂上。

そして向かった先で再び、通りすがりの顔見知りを捕まえて尋ねるのだった。


「白兎を見なかったか?」






【推理小説】

(謎は謎のままにしておいた方がいいことだってある)

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嘘つき、ロンリー。