【先達はかく語りき】03
「じんのうちだとわびすけとカブるし、りいちって呼んでいい?」
「いいよ。」
「じゃあ、おれのことは、」
「白兎。」
名前を呼んだ瞬間、ゆらゆらと不安定に揺れていた頭がガクンと落ちそうになる。
それと同時に「ぅあ?」と不明瞭な声が漏れ、慌てたように白兎は顔を上げた。
「わ、り…ねてた?おれ。」
口元を拭いながら問い掛ける白兎は少し舌足らずで、思わず苦笑してしまった。
勉強を教えて欲しいと頼まれ、立ち寄った白兎の家。
教科書を開いてから、もうどれくらい経っただろうか。
「少し休憩しようか」と持ち掛ければ、肯定のような否定のような唸り声が返ってくる。
「白兎?」
「…あー、うん…そうだな。ちょっと顔洗ってくる。」
そうして戻ってきた白兎は少しすっきりした顔つきで、飲み物と菓子類を手にしていた。
「大したもん、ねぇけど。」
「気を遣わなくて良かったのに。」
「いやいや。家に引きずり込んだの、俺だし。せめて、これくらいはさせろよ。」
「じゃあ遠慮なく。」
「どうぞどうぞ。まぁ、とりあえず一献。」
「おっとっと…」
「…何気にノリがいいよな、お前って。」
妙に感心してみせる白兎に笑い、注がれたジュースを一口飲む。
そしていつか同じやり取りを、本当の酒の席でやれたらと何となく思う。
その年になるまで白兎と一緒にいられたら、
「顔が良くて頭も良くて?その上、性格良けりゃあノリも良いとかどんだけだよ。イイやつ過ぎて、何か俺なんかに付き合わせるのが申し訳ないわ。」
「そんなことないさ。」
「ただ好きなだけだから。」
自然と口を突いて出たその言葉に、一瞬自分でも驚いた。
だが、すんなりと納得する。
そう、好きなんだ。
自分は白兎のことが。
それも友情云々ではなく、そういう意味で。
多分、ずっと前から。
「好き?面倒を見るのが?」
理一って学校の先生とか向いてそうだよなぁ、なんて見当外れなことを言いながら笑う白兎。
それを正すことなく、曖昧に濁したまま俺は白兎のコップにジュースを注いだ。
神ですら必然には逆らわない。 「イギリス諺」
(要するに、開き直るということ)
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嘘つき、ロンリー。