【seven】02


床に散らばる黒髪を一房掬い上げてみても、身動ぎ一つしない白兎。

その様子がまるで死体のようだと、愛花は小さく笑った。


そしてそのまま、猫をあやすように白兎の髪を梳かし始める。


「私が死んだら泣いてくださいね。」

「…いや、何?いきなり。」


独り言のつもりでこぼした言葉に思わぬ返事。


起きたのか、起きていたのか。

構わず頭を撫で続ければ、煩わしそうにその手を振り払われてしまった。


「こんなところで寝ていたら、踏まれても文句は言えませんよ。」

「もう兄貴に踏まれた。」


というか蹴られた。

そう欠伸を一つこぼし、白兎は上体を起こした。

首を左右に軽く倒せばパキパキと関節が鳴る。


「それで、さっきの何?死ぬとかどうとか…」


起き抜けにしては重い話題を、白兎は眠たげな表情で振り返る。

『本気にしていない』と言うよりも、それは『理解していない』と言った方が正しいようだ。


「よくよく考えると、私の周りの男どもは素直じゃない人が多いので。」

「で?」

「通夜の席で誰も泣く人がいないと、私の生前の人格が疑われるじゃないですか。」

「………気にするところ、間違ってると思うんだけど。」


また欠伸を一つ。

そしてがりがりと後ろ頭を掻いて、愛花が整えたばかりの髪を無造作に乱した。


ふと何かを思い出したように顔を上げる。


「どうでもいいけど、俺はその『周りの男ども』に入ってねぇの?」

「白兎はいいんです。私の弟なんですから。」

「、あー…」


虚ろな目が微かに泳ぐ。

だがすぐに思考を放棄したようで、「…まぁ、善処するよ」と白兎は小さく応えるのだった。





【傲慢】

(それは、盾。)

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嘘つき、ロンリー。