【seven】03


「大丈夫ですって。」


そう繰り返す白兎くんの両目は相変わらず真っ赤で、ずずっと鼻を啜る声に僕もまた同じ言葉を繰り返した。


「本当に?」

「くどいっすよ、吉野くん。」


普段はとろんと眠たげな目が、今は鋭くこちらを睨んでいる。

やはり兄弟なだけあって、その姿は真広によく似ていて…


(…花粉症の真広なんて、想像出来ないけど。)


「いいからさっさと行って、とっとと帰りましょ。」


有言実行とばかりに歩き出した白兎くんの後に続けば、三歩も行かないところでその肩が小さく揺れた。


「…途中、コンビニか何かに寄っていいかな。」

「?何か買うんですか?」

「うん、ちょっとね。」


ちょっと高級なマスクでも買ってあげよう。

それか、ティッシュの類いを。


知らなかったとはいえ、花粉症の白兎くんを外へと誘ったことに対する、せめてもの償いだ。


そんな僕の密かな決意に気付くことなく、白兎くんはこちらに背を向けたまま鼻をかんだ。


「…ところで一つ、分からないことがあるんですけど。」

「うん?」

「折角のデートなのに、何で姉ちゃん、来れなくなったの?」

「え、」


無意識に止まる足。

確かに今日、映画に行く相手が駄目になったとは伝えたけれど、それが愛花ちゃんだとは言っていなかった。


ましてや付き合っていること自体、


「…図星?」

「……………」


どうやら鎌を掛けられただけらしい。

沈黙を確証と受け取った白兎くんが足を止めて振り向いた。


そして「やってらんねー」とぼやきながらまた鼻を啜る白兎くんに、僕は思わず苦笑をもらした。





【嫉妬】

(それは、甘美。)

*前次#


戻る

嘘つき、ロンリー。