【kiss-er】04



『飛ばねぇ蛇はただの蛇だったみてぇだなァッ!伊達男ならぬ伊達豚もがっかりだぜ、コノヤロウッ!つー訳で実況はお馴染み、プラグマンだッ!懲りずに次回を待ちやがれッ!』








聞き馴染みのある声に、ふと我に返った。

それと同時に、今自分が誰を相手にしているのか思い出す。


「…あー、あーっと…」


あまりのばつの悪さに意味のない発声練習を繰り返し、先程触れた左手の感触を意識から外した。


客と並んでカウンターに座っているなんて、先代に知られたら叱られるに違いない。

そう頭の片隅でどうでもいいことを考えたのも、ただの現実逃避だ。


「すみませんね、こんな時間まで付き合わせちゃって。」


平静を装い、スツールから腰を上げる。

笑顔で全てなかったことにするのは大人の常套手段だ、と言っていたのは確か先代だっただろうか。


「今、コーヒーでも」

「白兎くん。」


そして、それにごまかされてくれるのは子どもだけだ、とも言われたような気がする。


「逃げないで。」


『逃げるかよ。』


反射的に吐き捨てそうになった言葉を飲み込んだ。


(あぁ、まただ…)


真っ直ぐに俺を捕らえて離さない目。

現役の頃にも何度か見たことがある、それ。


ようやく慣れてきた営業スマイルも敬語も、いつもこの人は台なしにしてくれる。


「、俺は、別に…」

「白兎くん。」


そして再び近付いてきた端正な顔に、今度は反応することが出来なかった。






唇なら




「やっぱり、君が好きだ。」

*前次#


戻る

嘘つき、ロンリー。