【kiss-er】05
『好きだったんだけどなぁ、白兎くんの走り。』
「引退なんて、早すぎるんじゃないかい?」
喫茶店から出てきた姿を見た瞬間、つい気持ちが先走ってしまった。
挨拶も前触れもなく、唐突に切り出した核心。
それを受けた白兎くんは足を止め、面倒臭そうに振り返る。
「…そういうあんたは、耳が速いな。」
いつもの彼なら舌打ちの一つでもするところ、代わりにぽつりとこぼれたのは小さな溜息だった。
おや、と違和感を感じて口を開こうとする前に、それを察したのか先回りする白兎くん。
「あー…別に早かねぇだろ。ボーソーゾクの寿命なんざ大体こんなもんだ。」
自嘲するかのように吐き捨てられた言葉。
『暴走族』。
確かに彼らの前身はそれだったと聞くが、今更その慣習に従う必要はないはずだ。
今の彼らは、
彼は紛れもなく、『暴風族』なのだから。
「それで?わざわざこんなところまで来て、俺の引退があんたらに何か関係あんの?」
白兎くんのその問い掛けに、ようやく本来の目的を思い出した。
『眠りの森』でシムカが駄々をこね、空がそれを煽り、呆れたキリクが僕に依頼した一件。
「君の、最後の試合がいつあるのか聞きたくてね。」
「……何で?」
「見に行くよ。」
チーム全員で、という話だったが白兎くんの最後の勇姿だ。
僕一人で独り占めするのも悪くない気がした。
「やめろ。」
不意に白兎くんの手が、僕の両目を塞ぐ。
反射的に振り払おうとして、でも初めて触れる白兎くんの温もりについ、されるがままになった。
それは、微かに震えて、
「あんたらには、見られたくねぇんだ。」
瞼なら憧れ
そしてその手が離れた瞬間、彼の姿はどこにもなかった。
(それが最後に見た、“ライダー”の彼の姿)
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嘘つき、ロンリー。