【kiss-er】06


『炎の王サマとかさ、かっこいいなぁって思うわけよ。』









「最近増えたよねー、ストームライダーってヤツ?」

「そういや知ってる?少し前までここらへん走り回ってた暴走族。あれもATに転向したんだってー。」

「うわぁ…バイクの音がしなくなるのはいいけど、ポリシーはないのか!って言いたくなるね!」


ケラケラとカンに障る笑い声にイラッとした。

一瞬買ったばかりのコーヒーやら何やらを紙袋ごと投げつけてやろうとしたが、それを舌打ち一つで押し止めたのは理性でも何でもない。


俺自身が、同じことを思っていたからだ。


(本当、先輩も余計なことをしてくれたもんだ…)


チーム内の体制を変えるだけ変えてさっさと引退、そして今や喫茶店のマスターに収まった三つ上の先輩。

店を溜まり場にさせてもらっているのには感謝するが、その分こうして買い出しなどの手伝いを、


「ホンマにココかぁ?」


もうすぐ店に着くというところで、これまたカンに障る声に思考を遮られる。

多分今は、聖母サマの声を聞いてもイラッとするんだろう。


「サ店や聞いとったが…なんや、けったいな名前やなぁ。」

「確かに、喫茶店とは思えないな。」


店の真ん前に男が二人、どいつもこいつも喧嘩を売っているとしか思えない。

とりあえず「邪魔だ」と口を開きかけた瞬間、関西弁の方がこちらを振り向いた。


ちらりと見えたエンブレムに、嫌でも見覚えがある。


先輩が憧れ、目指したチーム。


「遅いで、スピ。」

「…あ?」


関西弁の視線は俺を飛び越え、背後へと向けられていた。

一拍遅れて、つられるように振り返れば、トンッと軽い着地音。


「えっと…この店の人、かな?」


少し困ったように微笑む優男はやはりATを履いていた。

そして「荷物重そうだね、手伝おうか?」なんて耳障りのいい言葉を吐きながら手を差し出され、思わず舌打ちする。


「…あぁ、やっぱ喧嘩売ってんだな。」


そして俺は、出来たばかりのステッカーをその手に叩き付けた。






掌なら


(馴れ合いはいらない。)
(頼むから“敵”でいてくれ。)


それが最初でした。

*前次#


戻る

嘘つき、ロンリー。