【夏風邪引いたバカです。】02


火曜日のくしゃみ







この暑さでどうかしていた。
それ以外考えられない。


一目散に現場を離れた翔太はそう自分に言い聞かせることで、何とか落ち着きを取り戻そうとしていた。


さながら何か犯した犯人のようだ。


(……タオルケット…)


そこでふと本来の目的を思い出す。

ここで引き返すのは少し気まずいが、どうせ相手は眠っているんだ。

それに万が一、白兎が風邪引いた時は後味が悪いだろう。


(平常心…平常心だ、俺…!)


一通り精神統一を試みた後、タオルケットを片手に戻ってみると、


「……あ。」


先程まで自分がいた位置に理一が腰を下ろしていた。

翔太の声に反応したのか、振り返った理一は翔太の姿を確認し、さらにその手にあるタオルケットにも気付く。


「ちょうど良かった。さっきくしゃみしてたから、風邪でも引きそうだって思ってたんだ。」


そう言って柔和な笑みを浮かべた理一は腰を上げ、「白兎に掛けてあげてくれ」と翔太と入れ違うようにして立ち去った。

それを見送る翔太の背後で何かがごそりと動く気配が。


「くっ、あー…よく寝たー…」

「ぅおっ!?」

「ん?しょークン?何して…あ、もしかしてそれ、俺に?あんがとー。」


寝起きのせいか上機嫌にヘラヘラと翔太を見上げる白兎。

そこには先程の艶っぽさは微塵もなく、いつもの大雑把な二十歳の男がいるだけだった。


翔太の肩から力が抜ける。


「お前、何べん言ったら分かるんだよ…服着ろ、服!」

「いやー、ごめんごめん。でも、なんか良い夢見たなー…」

「夢だぁ?」

「それが可愛い女の子とキスする夢でさ。すっげー感触まであって、超リアルだった。」


なんて呑気な。

自分の葛藤など露とも知らない白兎に、一瞬にして怒りが沸いた翔太だったが何とか心を鎮める。


とりあえず用無しのそれを片付けようと、踵を返した瞬間。


「あー…でも、女の子にしてはちょいカサついてたなー…」


翔太はタオルケットを取り落とすのだった。


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知らない人にキスをする

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嘘つき、ロンリー。