【しのびのこども】03
※三年と黒羽主(バランサ)。
にこにこと、優しく、気遣わしげに。
まるで呼吸するかの如く、ごく自然を装った「善人」面。
そんな胡散臭いものが近寄ってきたなら、自分ならまず間違いなく「何企んでやがる」と身構えるところだ。
なんて思いつつもその「善人」面を被って、とある同級生に声を掛けたのは少し前のこと。
『大変そうですね、僕で良かったらお手伝いしましょうか?』
ほんの気紛れだった。
それを今、ひどく後悔している。
「てめぇらっ!待ちやがれごらぁっ!」
これほど荒々しく声を張り上げたのは、一体何年振りだろうか。
そんな単純計算に気を取られたせいで、また前方を行く二人との間に距離が開き、思わず舌打ちする。
(…いや、今ならまだ間に合う。あの方向音痴二人がはぐれもせずにいるんだ。それも良い塩梅に向かう先は風下ときてる…)
後は懐に入れた「粉薬」を用いて、術を施せばいいだけ。
すぐに済む、何も躊躇うことなどない。
幼少期に家族の下から連れ拐われ、初めに教え込まれたのは「自分も他人も信じないこと」。
そして次に教えられたのは、「他人も自分も騙すこと」だ。
自分はそれらの教えに、忠実に従って生きてきたはずだった。
『本当か!?ありがてぇ!』
ずるずるずると目の前を引き摺られていく二本の腰縄に、先程委員会へと見送ったばかりの同級生の姿がちらつく。
「……あぁっ!くそっ!」
本当に慣れないことなんてするものではないと、もう一度舌打ちした。
欠伸する暇もなく
(とりあえず身体だけは鍛えようと、そう思う)
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嘘つき、ロンリー。