【誰かの好意を踏みにじってしまいました。文字通り。】02
「ねぇ、冗談抜きでさ…本当にどうしたの、最近。」
「…別に、何でもねぇよ。」
「嘘。何年の付き合いだと思ってんの。そんな簡単にこの及川さんの目は誤魔化せないよ?」
「…………」
うぜぇ、クソ川。
そう言っていつものように殴れば済むはずが、こちらに向けられるその目があまりに真剣すぎて、思わず言葉に詰まってしまった。
「ねぇ、岩ちゃん。」
こんな時の及川は本当に厄介だ。
そして二度目に名前を呼ばれた時には、俺は渋々口を開くはめになっていた。
事の発端は一週間前の放課後。
下足箱に入っていた、一通の手紙。
差出人は、
「書いてなかった?」
「あぁ…」
単なる書き忘れかあえて書かなかったのか、その内容から見て多分後者だろうとは思う。
そう正直に話したというのに、及川は何となく納得していない様子で唇を尖らせてみせた。
「でも、心当たりはあるわけだ?」
「!?なんっ」
「だから今こうやって悩んでるんでしょ?」
いちいち核心を突いてくる及川の問い掛けに、嫌でも思い出してしまうのは一週間前に目にした光景。
人気の少ない下足箱で見かけた、何か思い詰めたような表情のクラスメイト。
『―…迷惑を掛けるつもりはありません。ただ、どうしてもこの気持ちだけは伝えておきたかった。』
「……手紙を入れるところを見ただけで、別にそいつが差出人って決まった訳じゃ……誰かに頼まれたってことも、あるだろ…」
歯切れが悪いことは、自分でもよく分かった。
それにもっと明確な否定の答えも、持っていた。
『部活、頑張ってください。応援しています。』
「気になるんなら本人に直接聞いてみたらどう?」
そして反射的にだったが、俺はようやくクソ川の顔面に一発拳を叩き込むことが出来たのだった。
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(簡単に言ってくれる…)
(それが出来ればこの一週間、悩む必要なんてなかった)
(……相手が男、なんて)
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嘘つき、ロンリー。