【誰かの好意を踏みにじってしまいました。文字通り。】04
「忘れて欲しい」と言われた瞬間、頭がカッと熱くなった。
「忘れられる訳がない」と怒鳴った瞬間、そんな自分自身に戸惑った。
そして一瞬驚いたように目を見開いて、すぐにその顔を歪めた白兎に―…
あの時、及川が割って入って来なければ多分俺は、この先ずっと後悔することになっていたと、そう思う。
『とりあえずさ、もう少し親睦を深めてみない?『友達』として。』
「…だからって、昨日の今日で一緒に飯食うとか、ねぇだろ…」
「え、そう?」
「一体、何話せばいいんだよ…」
「それをこれからお互いに知っていくんでしょ?」
どこか楽しそうな及川に少しイラッとしたものの、全てを知った上で変わらないその態度に正直少しだけホッとしていた。
どうやら及川にとって、手紙の相手が『男』だということよりも『白兎』だったことの方が驚きだったらしい。
それはまぁ…俺も驚いたけど。
「でも本当、白兎クン、岩ちゃんのどこがいいんだろうね?」
「……知るかよ。俺に聞くな。」
「だってさ!この及川さんを差し置いて岩ちゃんを選んだんだよ!?おかしくない!?」
「あぁ?」
うっせ、とその後頭部を軽く叩けば大袈裟に痛がってみせる及川。
「岩ちゃんのDVっぷりを知ったら百年の恋も冷めるよ…」なんて戯れ言に、もう一発殴ってやろうかと思っていると、白兎の待つ教室に着いてしまった。
「白兎クン、お待たせー!」
何の躊躇いもなく中に入っていった及川に覚悟を決めて後に続く。
すると、携帯から顔を上げた白兎と及川越しに目が合った…気がして、反射的に逸らしてしまった。
誤魔化すように白兎の机の上に袋を置けば、及川はさっさと白兎の前の席を陣取っていて、仕方なく俺は近くの椅子を適当に引き寄せる。
「待たせて悪かったな。」
「いや、購買混んでたんだろ?というか意外…部活あんのにお前ら、それだけで足りんの?」
「いやぁ、少し出遅れたみたいでさー、これぐらいしか残ってなかったんだよ。いつもはお弁当持ってくるんだけどねぇ…今日は朝練がいつもより早くって。」
「そりゃ大変だったな。」
「本当だよ…多分放課後まで持たないから部活前に一回、コンビニか何かに行かなきゃ。ね、岩ちゃん。」
「あー、だな。」
意外と普通に話せてんな…と思いながら袋を漁っていると、何か考え込んだ様子の白兎が不意に自分の弁当をこちらに差し出してきた。
「?何だ?」
「あー…良かったら何か食う?」
「いや、さすがにそれは悪」
「いいの!?じゃあミートボール!」
「おい、クソ川!」
すかさず身を乗り出した及川に拳を握ったところで、何とかそれをグッと我慢した。
別に先程の及川の言葉を思い出したからではなく、ただ飯時にバタバタと埃を立てる訳にはいかないと思ったからだ。
白兎が肩を竦めて苦笑する。
「いいよ。俺、別にこの後、体力使うことないし。」
「だけどよ、」
「白兎クンもこう言ってることだし!お言葉に甘えて、あー…」
「!?おまっ」
大きく開けた口を白兎に向けた及川が何をしたいのか、すぐに分かって何故か焦った。
しかも白兎の方も何故か普通に「あー…」と返しながら、ミートボールを摘まんだ箸を及川に、
「ぶっ!?」
その瞬間、及川が視界から消えた。
そして我に返ってようやく、自分が椅子から蹴落としたことに気付いたのだった。
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(ちょ、何すんの、岩ちゃん!?)
(っ、うっせクソ川!!)
(…やっぱ仲良いよな、お前ら。)
(!?ちが、これは…!)
(?)
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嘘つき、ロンリー。