【誰かの好意を踏みにじってしまいました。文字通り。】08


新入部員への主将、副主将の挨拶が終わり、マネージャーの番になった。

前の二人に倣って、学年、名前、簡単な一言で締め括ろうとしたが突然、主将から肩を抱かれて引き寄せられる。


「白兎は岩ちゃんのだからね!みんな、くれぐれも手を出さないように!」


あぁ、デジャブ…

俺がバレー部に入部したあの時も、確か及川は周囲に向かって同じことを言っていた。


そしてその後、


「テメェ!クソ川ぁっ!」


キレた岩泉に殴られるのも、それによって周囲に引かれてしまうのも、あの時と同じだった。








岩泉から、まるで愛の告白のようなバレーに対する熱い思いを聞いたあの日。

その真剣な思いに胸を打たれた俺は、岩泉の申し出通り、友人として出来る限りの協力をしようと心に決めた。


まぁ、具体的に何をすればいいか分からなくて、すぐ及川に相談したんだけど。


『じゃあさ!マネージャーとかどう?』


なるほど、雑用なら素人の俺でも何とかなりそうだ。


そう意気込んで早速入部届を準備したものの、よくよく考えてみるとマネージャーと言えば可愛い女子が定番。

さらに二年の中途半端な時期に入部ということで、当初は少々周囲との距離に微妙なものを感じた。


あれは色々と俺が悪い、本当に申し訳なかったと思う。


ただ及川の『岩泉の友達』発言が効いたらしく、面と向かって誰かに何かを言われるようなことはなかった。

岩泉も心配だったのか、暇さえあれば俺のすぐ側にいてくれたし。


おかげで今ではもう、すっかりバレー部にも馴染んでいる…と思いたい。


っと、岩泉の顔が真っ赤だ。

血管が切れる前にそろそろ止めた方がいいかもしれない。


「おーい、岩泉ー。」


ちなみに今、他の三年生達はじゃれ合う二人を俺に任せ、後輩達を促してすでに準備運動に移ってしまっている。


手慣れた様子だ。

…いや、そこは慣れちゃダメだろ、バレー部。


「ほ、ほら!岩ちゃん!俺の相手ばかりしてないで白兎も構ってやらないと!淋しがってるよ!」

「あぁっ!?」

「あんまり放っておくと愛想尽かして白兎出て行っちゃうよ!?」


んな倦怠期の熟年夫婦じゃあるまいし。

なんて、必死過ぎる及川の苦し紛れの言葉に俺は思わず笑ってしまった。



「それくらいじゃ出て行かないって。」



何気ない一言にその瞬間、二人がピタリと動きを止める。


え?何?どうした?


「…愛されてるねぇ、岩ちゃん。」

「っ、うるせぇよっ!」


何が何だかよく分からないが、どうやら俺は火に油を注いでしまったらしい。

岩泉の顔はますます真っ赤に染まっていくのだった。





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(…そういや『愛されてる』って言えば、)
(及川宛のラブレターを預かってんだけど、これ、いつ渡そう?)


さて、それは誰の好意でしょう?


END

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嘘つき、ロンリー。