【誰かの好意を踏みにじってしまいました。文字通り。】番外編


あれは僕が高校生の時、バレー部に入部して最初の夏のことでした。

流石強豪校というだけあって部活練習は夜遅くまで行われ、帰る頃には辺りはもうどっぷりと暗くなっていました。


そんなある日の休憩時間中、涼を求めて一人体育館を抜け出した僕は、そこで背筋も凍るほどの恐ろしい目に遭ったのです―…







なんて、昨日観た『マジであった怖い話特番』の冒頭ナレーションを思い出してしまったのは多分、現在よく似た状況にいるからだろう。


高校。バレー部。夏の夜。休憩時間。体育館の、外。


違う点といえば、俺がマネージャーであること、そして今一人ではないこと、だ。


「外に出るとあれだなぁ、中の熱気の凄さがよく分かる。」

「そうだな。」

「他のやつらも来ればいいのに…後半暑さで倒れたりしなければいいけど。」

「…………」


岩泉と外に出る時に及川にも声を掛けたのだが、「ここは任せて!誰にも邪魔はさせないから!」と妙にキラキラした笑顔を返されただけだった。

よく分からないが、流石主将ともなると休憩時間も色々とやることがあって忙しいのだろう。


新米とはいえマネージャーとして何か手伝うべきかとも思ったが、「放っとけ」と副主将の岩泉が言うのでお言葉に甘え、二人して体育館の外すぐに位置する階段に並んで座り込んでいるのだが。


(確か、昨日の『マジ怖』はあの後……いや、止めておこう。アレはマジで怖かった…)


それにいざという時、きっと岩泉なら幽霊だって張っ倒せる、と俺は信じている。


なんて自分自身に言い聞かせていると、ふと背後に奇妙な気配を感じた、ような気がした。

そして反射的に、岩泉がいるのとは反対の方へと顔を向けた瞬間、視界に入ったのは―…



(……………て?)



紛れもない、人の、手。

だが、この場には俺と岩泉以外誰もいないはず。


すると、まるで俺の視線に気付いたかのようにその「手」はピタリと動きを止め、静かに引き下がっていった。




真夏の怖 ( ) 話




『まだ白兎の手も握ったことのない、ヘタレな岩ちゃんにこの作戦を授けてあげよう!題して!「恐るべし夏の魔力!自然な流れで白兎の肩を抱いちゃおう作戦」!』


そんな及川の馬鹿な言葉に、唆された俺が本当に馬鹿だった。


二人っきりになった休憩時間。

何となく会話が途切れたタイミングを見計らい、意を決して白兎の肩に手を伸ばした、その瞬間。


あと少しのところで白兎に気付かれてしまい、思わず固まってしまった。


残念ながらそのまま進むほどの度胸はなく、むしろこの場から逃げ出したい気持ちでいっぱいになりながらも何とか手を引くことが出来た。

だがその後、何と言葉を続けるべきなのか分からない。


なんて必死に考え込んでいると、不意に白兎から俺の方に身を寄せてきた。

縮まった距離に戸惑いを隠せず、息を飲む。


「どっ…どうした、白兎…?」

「あ、や、なん、でもない…」

「っ………」


俯く白兎の横顔もどことなくぎこちない。


肩と肩とが触れ合った部分が少し熱い、ような気がした。




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(真夏の怖 (くない) 話)

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嘘つき、ロンリー。