【誰かの好意を踏みにじってしまいました。文字通り。】番外編


※『数カ月経過』辺り。







岩泉は考えていた。


今見下ろしているのは、最近親しくするようになった同級生の机。

次の授業の準備をしている途中らしく、筆箱や教科書、ノートが無造作に置かれている。


当の本人はトイレにでも行っているのか、それとも何かの用事で出て行ったのか、教室の中にその姿はない。

すぐに戻ってくる様子もなさそうだ。


そのため、岩泉は一人考え込んでいた。


目の前の光景に、どことなく抱く違和感。

その正体は一体何なのか?



(………あ。)



そして、ようやく気が付いた岩泉は無意識にそれを手に取っていた。


大学ノートの表紙に書かれた、科目名と持ち主の名前。

その筆跡が自分の知っているものとは少し違う、ような気がする。


いまいち確信を持てないのは、岩泉がその『比較対象』を目にしたのが一度きりのためだ。


親しくなるきっかけとなった、手紙。

一度最初から最後まで目を通した後、あまりの気恥ずかしさに二度と読み返すことが出来ず、自宅の机の引き出しに仕舞ったままにしている。


恐らく今日帰ったところで、改めてそれを開いて確認する気にはなれないだろうが。


(……授業のノートとあの…手紙、とじゃ書き方が違うのも当然か。)


そう自分に言い聞かせ、自身の意気地のなさから目を逸らすようにノートからも視線を外した岩泉は、それを机の上に戻した。


(まぁ、俺はこっちの字の方が好きだけどな……ん?)


「……すき?」

「何が?」

「うぉっ!?」

「うわっ!?」


突然掛けられた声に驚いて振り返れば、いつの間にか戻ってきていたらしい白兎が同じように驚いて後ずさった。


「わ、悪い…そんな、驚かせるつもりはなかったんだ…」

「、いや…」


この場に及川が居ないことが救いだ。

居れば、さぞ大笑いされただろう。


そっと胸を撫で下ろそうとした岩泉だったが、未だドキドキと鳴り止まないそれにふと気が付き、困惑するのだった。





手紙の話〜岩泉の場合〜

(気持ちを自覚する、一歩手前)

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嘘つき、ロンリー。