目を瞑れば不幸なんて映らない(2)
当たり前に未来を語る彼を見て、いっそ何もかも終わってしまえばいいと思った。生きることを諦めない、そう約束したばかりなのに、実際は消えてしまいたくて仕方なかった。
こぼれ落ちる涙はもはや枯れることを知らず、苦し紛れに含んだ飴玉は何の役にも立たない。ボロボロと涙を流す私へ、彼は戸惑いがちに手を添えてゆっくり背中を摩ってくれた。その優しさも温かさも、未来を見据える眼差しも、今の私には全てが苦しみとなって降りかかる。
「でも、楽しみです。もし本当にそんな日が来るなら、この隊長羽織をアナタにも譲る可能性が増えるってことっスから!」
「これからも、頼りにしてますよ。……アナタはボクが選んだんですから」
——突きつけられてしまったんだ。自分が今からどれだけ残酷なことをしようとしているのか。自分が裏切ろうとしている人が、どれほど無垢にこの先も当たり前に日常が続いていくと信じていて、どれだけ私自身も信じてくれているのか。八年間積み重ねてきたものの重みを、突きつけられてしまったのだ、私は。
「ごめんなさい。……裏切るようなことして、本当にごめんなさい」
こんな謝罪じゃ足りない。いくら謝ったって私の罪が消えるわけじゃない。それでも、吐き出さずにはいられなかった。謝ることすら自己満足でしかないと、ずっと忌避していたのに、苦しみのあまり私の口から出たのは謝罪だった。……感謝ではなく、謝罪だった。
私たちの間にあるものは、きっと天の川よりも広くて深い。永遠に交わることも触れることも無い、互いが何なのかすら知らないまま宙へ浮かぶ、星と星そのものだ。——織姫と彦星になんて、なれやしない。
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