尾形先生は我慢している


「ーであるからして」

つまらない授業に窓の外を見たり、ノートに落書きをしたりコソッと携帯を弄ったことがある方は誰でもいると思う。私もそれを良くしていた。授業にもよるが黒板にすらすらと書いてすぐ消す先生の場合はそれが出来ないけど出来る授業は絶対する。でもそれを何度も繰り返すと飽きてくる。(暇だなあ)シャーペンシルを指で回し時計を睨みながらこのつまらない授業を早く終われと願った




「今日はここまでにしとく」
授業に使った教材を教壇の上で纏めながら尾形先生は私を指さし、にこりと笑って「ななしのは放課後残っとけ」と学生にとって死刑判決を喰らってしまった。もちろん反論の声を上げた「えぇーそれはないよ尾形先生」と、纏めた教材を肩にとんとんと叩きながら「授業を聞いていなかったからな恨むなら自分を恨め」と痛い言葉を貰ってしまった。それはまあ確かにそうだけど他の人だって聞いてなかっただろうにと周りを見るとみんな目をすっと逸らしたみんな私をスケープゴートにしたな覚えておけよと心に誓いつつ渋々「分かりました」と頷いた。


授業が終わり放課後になるとみんな部活や家に帰る子や遊びに行く子達がきらきらと羨ましく見え「いいなあ」と呟く。

溜息をつきどれくらい待てばいいのだろうかと思うと待っている時間が凄く長く感じノートを開き暇つぶしに落書きしちゃおうかなと可愛い猫のシルエットに尾形先生の独特の目を描いてみる。これは中々上手くできたのでは無いのだろうか。横におがにゃん先生と名前を書き、写メ撮って友達に送ろうとスカートのポケットの中にあるスマホを取ろうとした。

「…おがにゃん先生?」

いつの間にか近くに来たのか私の顔の横に先生の顔がありノートを覗き込まれていた。あまりの近さに「ひぇ」と悲鳴をあげ呆然としていると尾形先生の匂いにつつまれる。男子とは違う男の人の匂いにドキドキしながら何とか「せんせいちかいです」と伝えると尾形先生はノートから私に視線を移し手に持っていた教科書で頭を叩かれ私はうぅと頭を押さえる。これ以上馬鹿になったらどうするつもりなんだろう

「はは、普通呼び出されたら礼儀正しく待つのが当たり前だと思ったがお前は本当にマイペースだな」

「だって先生遅いんだもん!」

「大人はやらなければいけない事が多いんだ」

「屁理屈!」

そう言うと先生は笑いながら頭をさらっと撫でて話を進めた。先生はいつも私の頭を撫でる。それが好き。先生には言わないし、わざとしかめっ面でされたくないのにって装ってみる。先生はそんな私の顔を見てニヤリと笑った。


空の色がオレンジ色になり教室もその色に染まった頃まで説教という名の話が続くと先生は顰めっ面しかめっつらをした。

「もうこんな時間だな今日はここまでにするぞ」

「今日…?もしかして明日も?」

「なんだその嫌そうな顔は」

「いや…だって先生の授業聞いてなかった子がいたのになんで私だけなんですか?」

不貞腐れた私に向かって先生も不機嫌そうな顔をしながら私の方へ向かい歩き出すと私の机の前で止まり無表情で私を見つめ手を私の方へ伸ばしたかと思うとさっと手を戻し「…卒業したら教えてやるよ」無表情にそう言うと私を教室から出るまで先生は教壇から離れなかった