職場の先輩
私には怖い先輩がいる。いつも何を考えているか分からない無表情でいきなり手を出してくるかと思えば突き放す。自分の管理も上手く出来ているんだろうなと思えば熱を出して出社してくる。
「…身体クラクラする」
「先輩ちょっとおでこ失礼しますね…げっ、熱出してるじゃないですか!」
最近はウイルスでなんやかんやで世間が大忙しな中、先輩は熱を出したらしい。私が熱というワードを出した途端皆がぎょっとした顔でこちらを見た。
「身体がきついのなら休めば良かったじゃないですか」
「…仕事が俺を待っている」
「いや…先輩、いつも仕事を私に押し付けていますよね?」
仕事に責任を持っている発言に見えるが先輩は仕事をしない。部下の私によく押付けていつもの独特な笑いで「いい部下を俺は持ったな」と言うのがいつものセオリーだ。なのに今日はパソコンを起動して仕事をしようとしているなんて信じられない怖い。
「もう!休んでください!」
パソコンをシャットアウトして先輩に言うとジロリとこちらを見る。熱のせいか目が潤み頬が赤いためか怖くはない。仕事をする先輩を何度か諌めていると月島課長からお前も尾形も休めと言われる。先輩が休むならわかるが何故私も?と言えば
「尾形をこのまま1人で帰す訳には行かないだろうが」
「そ、それなら私ではなく他の人がしてくれても…!」
誰か他に居ないのかと周囲を見渡すとみんな仕事に取り掛かっており動ける人が居ない。しかし、このまま先輩の看病コースになるのは御免だ。何とかこの場を収めるにはと考えているとグイグイと腕を引かれた。
「…何ですか先輩」
先輩が椅子に座っているため立ち上がっている私の腕をぎゅっと掴み自然に上目遣いで私を見る彼に問いかけた。辛いのか涙目になっており何処か男の色気を出していて目に毒だ。早く用件を言ってくれと目で訴える。
「…お前がいい、ななしのに看病されたい」
ひゅっと息が詰まる。その状態でそれを言うのは反則行為だと頬が赤くなるのを感じた。月島課長私も熱が移ったようです。