相談課


尾形に送ってもらい会社の駐車場で仕事内容を聞くと聞きなれない用語が出てきたのもう一度聞く。今なんて言った?耳がおかしくなったのかもしれないと私は呆然としながら質問を問い掛ける。

「えっともう一度いいですかね?ちょっと耳の調子悪いみたいで」

質問をしたあと視線でめんどくせえなコイツと言われた気がする。我慢だ、我慢よごんべえ怒っちゃダメだ。プルプルと震えながら耐えていると溜息をつきながら前髪を撫でて尾形は口を開いた。


「お前は相談課だ」

耳おかしくなかった。大企業で相談課って何をするんだろう?私資格とか持ってないんですけどいけるんですかとか色々と謎が増えていく。

「えっと、具体的にはどんな仕事なんですか?」

「俺が知るわけないだろう。これでも見とけ」

尾形から紙を渡される。説明の紙あるじゃないですか!最初からこれ渡してくださいよ!と言いながら紙を覗くと言葉を失ってしまった。「じゃ頑張れよ」と車から追い出され駐車場にぽつんと立つと尾形の車はスピードを上げてその場を去っていく。あいつ逃げたな。この紙を会社から渡されてなんの説明もなかったのかもしれない。だから電話で伝えないまま会社に私を送ったのだろう。逃げないように。

「なんだこの…騙された感、いや面接の時にろくでもない会社って知ってたけど…もう一回だけ紙を見てよう。ほら、もしかしたら見落としてるかもしれないし」


みんなの相談に乗ろう!!!




どこをどう見てもそのみんなの相談に乗ろうしか書いてないA4用紙のもの。いやこれA4も使う意味ある?そこら辺のメモ用紙でも良くない?資源の無駄じゃね?と言うか



私が相談に乗って欲しい切実に









「はいこちらに新しく配属される事になったななしのごんべえさんだ。みんなよろしく頼む」

「ななしのごんべえです…よろしくお願いします」

と言い終わるとぱちぱちぱちぱちと疲れた顔で拍手をしている人達を見て顔を引きずりながら拍手を受け取った。駐車場で固まったが何とかして会社に出社したよ褒めて。この異様な空気が漂う職場。壁のあちらこちらに栄養ドリンク格安!とか 疲れの取り方体操とか、薩摩弁の簡単な覚え方とか貼ってたり知らないおじさんには気をつけろとかも貼っている…自動販売機にはたくさんの栄養ドリンク、ヨーグルト、本棚を見ると「温泉世界全国マップ!」など…いやもうフリーダムか、フリーダムなのかここ。


「帰りたい…」

「え?なんか言ったななしのさん」

「い、いえなんでもないです」

危ない。本音が口から出てしまった。聞かれなくてよかったーと胸を撫で下ろしながらモブ男先輩の説明を聞く。変な名前をつけられて可哀想にと思いながら聞いた。

「仕事内容については月島さんに聞くといいよ」

「どなたですか?」

「ほらあそこで栄養ドリンク机いっぱいに置いている所あるだろ」

「ちょっと置きすぎじゃないですかねあれ」

指されたところを見るとデスクに3箱栄養ドリンク置いていて、ひくりと頬を動かした。え?ここの会社大丈夫?ブラック企業なんですか?

「はははは…俺もそう思ってたよ…でもこれが当たり前になってくるから…」

笑った後に真顔になり深刻そうに呟いた。いやもうブラック!!頭の中でオー人事オー人事って歌が流れてる!助けてと心配になっていると「まぁなんとかなるさ」と片手を上げて去っていく。が、ひらっとモブ男先輩の裾から紙が落ちた。


「あの…落ちましたよ」


と紙を拾い上げて渡そうと視点を下げると『やめたい』とズラっと字が書いてある紙だった。モ、モブ男ーーーー!仕事やめろーーー!早まるなーー!汗がダラダラと流れるのを感じたが何とか見てない感を出さなければいけないと思い、紙を平常心で渡した。

「あぁ…ごめんよありがとう。見た?」

「…みみみてないですく!!」

「そうかななしのは面白いやつだなあ!」

と言いながら去っていった。強く生きてくれモブ男…。


「取り敢えず行くか…」

初日早々闇を見てしまった。社員ではなく派遣社員なのでまだましかと何とか気を取り直し栄養ドリンクデスクに向かうと坊主頭の人が目を閉じていた。声掛けていいか迷ったが勇気を振り絞って声を掛けた。

「あの…仕事の事は貴方に聞くようにと言われきたのですが」

「!・・・すまない少し疲れていて気付くのに遅れた」

「相談課長の月島基だよろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします」

「本当に申し訳ないんだが君用に研修用として準備していた物が用意されてなくてな…少し待っていてくれないか?そこの椅子に座って待っていてくれ」

「了解です」

「助かる」

カタカタとPCを打ちはじめる彼を見て私はこの月島という人は誠実そうな方だと思った。最近会った人の中で1番まともな人だ…身長は私より少し大きいが一般的男性と比べると低いと思う大きさ…でも身体はムキムキボディ…凄い筋肉…自衛隊に居そうな人だなと思いジロジロ見ていると視線に気が付いた月島さんが私の方に振り返り「どうかしたか?」と不思議そうな顔でこちらに聞かれた。あっやべ、見過ぎたと混乱して


「いや身体の筋肉凄いなと思いましてかっこいいなって見ちゃいました…」 

と言ってしまってた。私なんてことを、口走ったんだろうと恥ずかしくなりながら「そ、そうか」と頬を掻きながら照れくさそうに笑う彼を見て穴に潜りたくなる。

「す、すいません」

「…ななしのさんは可愛い方ですね癒されます」

「勘弁してください…」

か、可愛い!?何を言っているのこの人は…!私はもう色々と限界を超えて顔を隠すために下を向いた。