相談課長
夜中、会社に月島基は男と向かい合い話を聞いていた。相談課長ではある彼はプライベートの相談は受け付けていないと言うのに、鶴見社長の相談だから付き合えと嫌々ながら付き合わされた。その相手は感情剥き出しながら「女が、採用されてしまった…」と言っており、「そうですか」と言えば「お前は気にならないのか!鶴見さんに、恋簿するかもしれんのじゃぞ!!」
等とそんな事を言いまくる。
恋愛だのそんな事を大の大人が職場で言うか普通…。鶴見社長の熱狂的ファンと言うか信者というか…こいつは1回病院で何とかしてもらった方がいいのでは?と思うが治らないだろう。医者が匙を投げるレベルだと思われた。
「聞いてんのかぁ!月島ぁ!」
「はい、はい、聞いてますよ」
心の中でため息をしながら話に付き合う。相談という名の愚痴を聞かされ、最後は鶴見社長がどれだけ凄いかという自慢話になっていた。
気が済んだのか、にこやかな顔で家へ帰る男を見て溜息をつく、やっと終わったか。明日は新人の子が入り色々と準備が必要だと言うのにと一人後ちる。時計を見ると夜中の3時…家に帰り睡眠をとり出社するとなれば睡眠時間が減ってしまう事がネックだった。
「仕方がない会社で寝るか」
背筋を伸ばし寝る体制をとり始める。よくある事、机の上に置いてある栄養ドリンクの瓶をゴミ箱に投げ入れて椅子を3つならべ簡易ベッドを作ると彼はそこで横になり目を閉じた。
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鳥のさえずりが耳に入り、目を開ける。椅子の上で熟睡出来るわけでもなく、体が重い。きちんと寝れば鳥のさえずりも、いい目覚まし代わりになるのだが、今の状況では耳障りにしかならなかった。
「もう…朝か」
軽いストレッチをして会社に置いている私物から歯ブラシなどを取りだし準備をしていく。月島基のプライベート品が揃っているそこは、家と何ら変わりはない。それだけ彼はこの職場で夜を過ごす事が多いことが窺えた。
「おはようございます…うわ月島課長顔が死んでますって!」
「お前も…死んでいるぞ」
「俺は大丈夫ですって!新人の研修、俺しましょうか?」
「なら新人の自己紹介任してもらってもいいか?研修は俺がする」
モブ田モブ男、俺の部下である。きっちりとスーツを着こなしているが感情が死んでいるように見えた。俺の事を気遣ってくれるいい部下である。紙に辞めたいと一心不乱に書く姿も見た事があるが、それは触れない。俺はカウンセラーではないのだ。しかし、相談されればいつでも応えてやろうと俺は思っていた。
「任せてくださいって!その分月島課長寝といてください。終わったら新人向かわせますんで!」
「すまないな」
いい部下を持ったものだ。言葉に甘えて目を閉じた。朝の太陽の暖かさに包まれて睡魔に襲われていく。「あの…仕事の事は貴方に聞くようにと言われきたのですが」と声が聞こえて一気に覚醒され、目を開く。
「!・・・すまない少し疲れていて気付くのに遅れた。相談課長の月島基だよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします」
自己紹介をして握手を求める。よくあるスタンダードなその自己紹介に彼女は応えた。普通な子に見えるが…鶴見社長が採用した人間であるため何処か癖がある人間かもしれない…しかし、癖がある人間でも普通に接することは中々ない。珍しいこともあるもんだなと感慨深い気持ちになってしまった。
「本当に申し訳ないんだが君用に研修用として準備していた物が用意されてなくてな…少し待っていてくれないか?そこの椅子に座って待っていてくれ」
「了解です」
「助かる」
研修に使うファイルなどを準備していないのでパソコンからデスクトップに引き出していくと視線を感じた。モニターではなく俺自身に…質問したいことでもあるのだろうか?もしその場合なら早めに聞いた方が後々残らなくて済む。
「どうかしたか?」
振り返りななしのさんを見ながら聞くと視線を横に逸らして慌てたような表情で
「いや身体の筋肉凄いなと思いましてかっこいいなって見ちゃいました…」
なんだそんなことか…確かに俺は日課として筋トレをしているが…いや違う…かっこいいなって見ちゃいました?ある男の奇声が頭に再生されたが何とか気を持ち直す。最近の若い子はこんな風に男を褒めるのが流行っているのか…?
「そ、そうか」
と答えると。顔を赤らめて涙目になっている彼女を見ると虐めたくなり、「…ななしのさんは可愛い方ですね。癒されます」と言ってみた。
「…勘弁してください」
小声で下を向く彼女の姿を見て俺は何を言っているんだと頭を抱えたくなった。疲れているから変なことを言ってしまうのかもしれない。今日は何を言われても家に帰って寝よう。
「ちょっと、こっちへ来て、このモニターを見てくれないか」
「は、はい」
椅子を持ってこちらに向かう姿を見て癒される自身に気付き苦笑をしてしまう月島だった。