【SZY.】


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第一話コチラ
第二話コチラ


拓海たちが集う場所がガソリンスタンドなら、父親たちは政志の工場である。


「これ以上は弄りようがないと思うがな」

「年齢的にキツイんだよ、もっと軽くしてくれ」


ガレージにある紺碧のインプレッサは、もう充分な経験値を積み完成されている。秋名やここ周辺の走り屋に名前が通るようになって幾度か勝負を申し込まれても、今のところ負けていない。だが、抗えないものがそろそろ出てきたのだろう、文太は政志に注文を入れた。


紺碧の文太 第三話


「足回り中心にやってくれ。あともうちょいアンダー出したい」

「ドライブシャフト軽めにするか?」

「いや、強度は落としたくねェからそのまんまでいい」


さっそく頭の中でセットを考え始める政志を余所に、火気厳禁のガレージを抜けたシャッター先で文太は煙草を取り出す。と、


「あ、文太おじさん」

「お」

「いらっしゃい、今日も来てたの?」

「おー、今帰りか。世話んなってるぜ」

「えへへ。毎度ありがとうございます」


学生服の少女。名をリオという。ここ鈴木自動車の看板娘だ。


「お父さんただいま」

「おーリオ、おかえり」


制服のままでインプレッサに近づく。少々傷の目立つボディに、にこにこ顔が映った。


「どこ弄るの?」

「足と内装。先に足からだ」

「手伝うね、着替えてくる」


ガレージ奥に繋がる勝手口へぱたぱたと駆けていくリオ。後ろ姿を見た文太は政志に詰め寄った。


「オイ政志、まさかあの歳で触らせる気か」

「もう高3だ。車の構造なんてもんはとうに頭に入ってるさ」

「そういうことじゃない、免許だ、整備の。今そこら中でうるさいじゃねェか」

「無免で走らせてたお前がよく言うなァ。安心しろ、免許持ってる。リオの制服に見覚えねェか文太よ」


渋い顔を向けていた文太は、はて、とリオの姿を思い出した。どうやら合点がいったらしい。工業高校。ならば授業の一部で免許取得の機会があってもおかしくない。


「跡継がせる気か?」

「本人に嫁に出ていく意思がなければな。ま、オレの代で畳んじまっても悔いはねェけどよ」

「可愛らしいお嬢ちゃんなんだから引く手数多になろうに」

「そんときはそんときだ」


若いときからこの工場に来て談義している文太。夜になれば祐一もときどきやってくる。リフトで上げた車体を見上げる政志の横顔は、昔と変わらず、だが穏やかな父親のそれでもあって。


「おまたせお父さん」

「よし、始めるか。インパクトレンチ持ってきてくれ」


作業着のリオがやってきた。と、


「あのよリオ」

「なに?おじさん」

「お前さんほんとに弄れんのか。いくら政志がいるとは言え力仕事なんだぞ」

「む。それって私が子供だから?それとも女だから信用できないってこと?」

「それもある。それに汚れるだろう、華の女子高生がいいのかい」

「ふふっ心配してくれてるの?平気よ、私小さいころからこの工場は遊び場だったもの。オイルで悪戯なんてしょっちゅうしたわ。だからやらせて?おじさん」

「リオは昔から頑固だ。やりたいと思ったら貫くぞ」

「はあ…政志よ、危険なことは絶対にさせるな」

「やらせてくれるの?!」

「それとリオ、夜更かしは美容の敵だ。長い作業になるときはちゃんと寝ろ」

「そうするわ!ありがとうおじさん!」


嬉しそうに顔を綻ばせるリオを見ていると、ああ、拓海も車が好きならもっと笑えばいいのにと、今は親を離れた息子を思う文太だった。

小柏健から勝負の電話がかかってくるのは、これからもう少し先。冬に近くなる頃である。



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前回の小柏パパ回から少し遡った頃のお話です。ピッコロおやじとフィオちゃん。少し台詞をお借りしました。フォルゴーレ並のエンジン載せちゃいますかね政志さん^ ^

2018.1〜

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