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ここはウチの敷地だと啓介から聞いた秋山渉は、初めは『金持ちめ』とブツクサ文句を言っていたけれど、まわりの空気に溶け込んだのか今は走り屋連中と談笑中である。群馬にも顔が広く、何より同じハチロク乗りとして藤原拓海を苦しめたドライバーだということは、埼玉県内外へ既に伝わっていた。レトロカーのセッティングについて初代NAユーノスに乗る末次トオルと語り合っているときに、妹の和美とチームメイト岩瀬恭子がやってきた。
「アニキ、私たちあきらさんのところに行ってるね」
「あきら…、おー、あそこな、わかった」
「あれ、延彦は?渉」
「あっち。高橋涼介んとこ」
高橋家令嬢は、ここから少し離れたところで栃木のイカつい連中にちょっかいを出されている。頭をわっしゃわっしゃと撫でられ、乱れた髪を怒りながら直している姿が見えた。延彦はというと、史浩とともにテーブルについた涼介と微笑を交えて談義中だ。きっと自分にはわからない難しい話をしているのだろう。妹たちを見送って、渉は再び「ターボってよ、」とトオルに語り出した。
今度そっちの地元に行くぜと約束をし、トオルと、途中からやってきた敦郎と連絡先を交換した渉は、和美と恭子がいるあきらの元へ。テーブルには、肉より野菜が多く並んでいる。
「もっと肉喰えよあきら。だからそんなひょろっこいんだぜ」
「そんなに細いかな私…。さっきも言われたのよね、細いから夏バテしてないかって」
「和美の脂肪、分けてやったらどうだ」
「ひっどいアニキ!気にしてるのに!」
「女の子に対してそれはないって渉!ねーあきらさん!」
「和美ちゃんは全然太ってないよ。ふたりとも、女の子らしくて理想だなあ。子供っぽいからさ、わたし…」
「確かになあ、オレとタメには見えねェよな」
「わっ渉くん酷い…!」
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