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神奈川×真ん中。
宵闇の酔っ払い。
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人の好みは十人十色。とかくアルコールの合う合わないはこと細かく違いがあると思う。
奥山さんは苦いものが駄目で、小早川さんは甘いものが飲めない。大宮さんは日本酒が苦手で洋酒ばかり。皆川さんは麦が良くて芋が嫌い。カイくんは専らビールで、池田さんは下戸。凛さんは何でも飲めるらしい。
「…」
すう、すう
(…子供返り…?)
池田さん家で宅飲みするからお前も来いと例に漏れず無理矢理な誘い。受けるべきか迷ったけれど『ストッパーになってくれ』と凛さんに頼まれては、はいと言うしかなかった。
「悪いな、わがまま王子で」
「…動けない、です」
タンブラーに梅酒を入れて持ってきてくれた凛さんが、こそりと呟いた。
「すっかり豪のものにされてしまったな」
「語弊があるのでやめてください」
ちりんちりんと風鈴が鳴る、池田邸座敷の縁側。ほろ酔いの頬を冷ましたくてひとりテーブル席を離れたら、ずしりと背中に重りが乗った。
「なァにひとり勝手にいなくなるンだよ」
「豪、やだ、重いよ」
「やだ。お前の行くトコはオレも一緒に行くのー」
「わ、顔まっか!もー、誰ですかこんなに呑ませて!」
肩に腕をまわして後ろから抱き締められる。素面のときにこうされたら、きっと、ドキドキして私が赤くなってしまいそう。だけど、
「…あー、オレ?なのか?」
「いや、大宮だけじゃないな。小早川、お前自分が甘い酒が飲めんからと豪に注いでなかったか」
「え、責任転嫁ひっど皆川さん。呑ましたっつってもチューハイ一缶だけっスよ。オイ小柏、ひとりでその数はあり得ねェよな、犯人はお前だ!」
「えええ!?た確かに豪さんに注ぎましたけど一杯だけっスよ!オレ、ビールしか呑めないんでこんだけ全部自分です!」
「つーかあの坊っちゃん今すっげェ羨ましいことしてんだけど。オニーサン殺っていい?いいよね?」
「広也、御仏の前で遣っていい言葉ではないぞ」
「…ああ、アレは頂けないな。どれ、ちょっとこらしめるか」
「要は呑ませたのは皆さんなんですね?まったくもう…ほら、豪、ちゃんと座っ、きゃあああ!」
「あー…やっぱお前きもちい…ふわふわする…」
後ろから体重を掛けられ、縁側の猫のように甘えていた豪が、そのまま前へ倒れ込んだ。…私を捲き込んで。
「いいにおーい…なんか、甘…」
「わああ!豪、だめ、首…ッ」
酔っ払いの力には敵わず、押し退けようにも腰に腕を回されて身動きが出来ない。真っ赤な顔で幸せそうに笑いながら、豪は首に鼻を寄せてはキスを落とし、くんくんと鳴らす。くすぐったくて、やめてほしくて、豪の服をきゅっと握った。
「かーわい…、ねぇ、ちゅーしていい?」
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