「去年と同じくこんのすけがイベントのチラシを持ってきてくれたので、今年は海が良いって、仕事をしながらシロと話し合っていて」
「そこに瑠璃が来てああなったってのが騒動の経緯だ」
「納得」
何というか…言葉は悪いかもしれないけど、懐かれたのが運の尽き?別に瑠璃は悪い子じゃないんだけどね。お嬢様育ちだからしょうがない。注意できる人間が注意してあげないと。
ってことで、その役目は翡翠担当なんだよね。
「はぁ…」
「ちょっと翡翠、溜め息吐くと幸せが逃げるわよ?」
「俺の幸せ根こそぎ奪ってんのはてめぇだろうが馬鹿」
「はは。じゃあ今年は皆で海だね、翡翠」
「ああ」
「良いかな、クロちゃん?」
「えっ?はい、私は構いませんが…。お二人は他のイベントとか行かないのですか?仕事でもないのに私たちが一緒ではご迷惑じゃ…」
「全然!俺まだどれ参加するか決めてなかったし」
正直、イベントとかどうでも良い。去年だって政府がイベント催すなんて初めてだったから試しに参加してみただけだった。そしたら思いの外刀剣たちも楽しんでくれてたし、皆を見てて俺も楽しめたんだよね。
だから今年はどうしようかと…、悩んでたわけではないけど翡翠に相談してみようと思ってたところだった。この際だからまた特別部隊の皆で行くのも良いだろう。
それに刀剣たちがいるから大丈夫だと思うけど、クロちゃんとシロちゃんは女の子だしね。変な虫が寄ってこないか心配だし。
…あ、瑠璃も女の子だった。まぁ瑠璃は心配しなくても大丈夫かな。ある意味俺たちの中で最強だしね。
「ありがとうございます」
「ふふ、気にしないで。俺もクロちゃんたちといるの楽しいしね」
「それは良かったです。では行くとしましょうか」
「えっ?」
「は?」
行く?イベントって今日じゃないよね?
え?プライベートでってこと…でもないよね?
翡翠と共に疑問符を浮かべていると、当然のように立ち上がったクロちゃんが瑠璃の前に手を差し出す。
「水着、買いに行きたかったんだろう?」
「!!うんっ!うんっ!さっすがクロ!あたしのことわかってるぅ〜!」
「調子に乗るな」
「えへへ〜、早く行きましょ!」
再びハイテンションになった瑠璃は跳び跳ねながらクロちゃんの腕へと絡み付く。
成る程ね、瑠璃は海に行きたいから一緒に水着買いに行こうってことでクロちゃんの本丸に来てたのか。そこまで読めてたクロちゃんも凄いな。
「ほらほら、翡翠と瑪瑙も行くわよ!」
「はぁ…。鎮めても結局振り回されるのか」
「もはや宿命だね。お疲れ様、翡翠」
「てめぇも来んだよ瑪瑙」
「はいはい」
クロちゃんたちに続いて出ていく翡翠。その後ろをついていきながらふと気づいた事実に一人立ち止まった。
いつの間にかこうして皆で行動するのが当たり前になってきている。最初は翡翠と。そこに瑠璃が加わって、クロちゃんとシロちゃんも…。
「…………」
「…どうした」
「おっと、久しぶりに口開いたねクニ」
「ふん。どうせ写しの存在なんか忘れてたんだろう」
「まさかまさか。大事な初期刀を忘れたりしないよ」
「…それで?」
「ん?」
「何か考えてただろ」
「……いや、壊されたくないなぁって」
「…………」
やっと俺にも"大事"だと思える存在ができたんだ。
奪われたくない。壊されたくない。
あの時みたいに…
「何も起こらないと願ってるけどね。でも、最近"静か"だから何か起きそうだと思ってさ」
去年も確かそうだった。夏祭りの辺りからクロちゃんの周辺で異変が起きて、最終的に彼女の本丸は全焼。皆無事だったのは運が良かったとしか言えない。
同じ時期に同じことが起こるとは限らないけど、何も無いと逆に不気味だ。
それに…
「消えろ」
"あいつら"もいつまでも大人しくしていてはくれないだろう。
「あーあ。平和が欲しいなぁ」
「…………」
「瑪瑙ー!置いてくわよー!」
「はーい」
大声で叫ぶ瑠璃に返事をして俺も外に出る。
瑠璃、翡翠、クロちゃん、そして刀剣男士たち。
守りたいと思う対象が年々増えていく。
(強くならないとな…)
あの頃に戻るなんて、二度と御免だから。
「クロ、これはどう?」
「却下」
「ちょっとくらい考えなさいよ!」
「布の面積考えろ」
「ちゃんと隠せるから良いでしょ!?」
「そういう問題じゃない」
「どういう問題よ!?」
「なんかデジャヴを感じるね」
「去年も浴衣決めんのにこうなってたな。瑠璃嬢のセンスは相変わらず酷ぇ」
「今年は決めてあげないの?」
「アホか。女の水着決められるかよ」
「はは!冗談だって」
「…無理すんなよ」
「!…バレてたか。サンキュ」