真夏の海は気持ち良かった。日差しがある分、冷たい海はいつまでも漂っていたくなるくらい肌の熱を冷まさせてくれる。



「はぁ〜疲れたぁ。ちょっと休憩。翡翠も泳げば良いのに」


「喧嘩売ってんのか、買うぞ」


「あはは!ごめんて」



カナヅチだもんな、翡翠。全く泳げないわけじゃないらしいけど、泳げても精々10mだって言ってたかな?
泳いでる内に沈んでいくとか…。溺れられたら困るしもう言わないでおこう。

じゃあ翡翠がわざわざ海まで来て何やってるかというと…、江雪、宗三、小夜、歌仙と共に貝殻でアクセサリーを作っている。心なしかあそこだけ温度が低く感じる。



「……できた」


「上手にできましたね、お小夜。ね、兄様…」


「……貝殻と…和睦できません…」


「に、兄様っ。ほら、こっちの貝殻を使いましょう!ねっ!」



ネックレスやらブレスレットやら…わざわざ創作専用の道具まで持ち込んで。
ねぇ、左文字兄弟も微笑ましいけどわかってる?
1ミリも"海水浴"してないよお前ら。

ついでに言うとあとの二振、三日月と鶯丸は茶を飲んでいる。こちらもわざわざ野点道具を持ち込んで、飲み干したら翡翠がまた茶を点てて茶菓子を食べながらのんびりと海を眺めていた。
お前ら海まで何しに来たんだよ。


そして瑠璃は刀剣たちとスイカ割りをしている。目隠しして木刀を持った瑠璃の先には大きなスイカ…、と、同田貫の頭。



「おい待てコラ!!誰だ俺を埋めやがったのは!!」


「はっはっはー!無防備に寝てるからそうなるのよ〜!」


「待て待て待て待て打つなよ!?てめぇの腕力食らったら流石に折れる!!死ぬ!!!」



…どうやら同田貫が寝てる間に砂で埋められてしまったらしい。頭だけ出した砂風呂状態だ。

同田貫が言うように瑠璃の馬鹿力で打たれたら脳天真っ二つ。即破壊。近くに長曽祢虎徹がいるし大惨事は起こらないと思うけど…気にしておこう、危険だから。



「瑪瑙さん!瑪瑙さんも飲み物どう?」


「あ、飲む。ありがとう、シロちゃん」


「どういたしまして!」



お呼びがかかったパラソルの下ではシロちゃんたちが先に休憩していた。

大和守くんたち新撰組刀四振と、乱くん。彼もシロちゃんのお世話でついてきたのだろう。一緒にアイスを頬張って、並んでるとまるで姉妹に見えるね。乱くんは男の子だけど。



「ん?クロちゃんは呼ばないの?」


「主さんはねぇ…。ふふ、あっち見て」


「あっち?」



ニヤニヤする乱くんの指差す方向。波打ち際で佇む薬研くんと、彼の手を握ったまましゃがみこんでいるクロちゃんがいた。

何をしてるのかと思えば波に手をつけた彼女はキラリと光る貝殻を一つ拾い上げ、薬研くんを見上げて微笑する。そよいだ風が結った彼女の髪を靡かせ、眩しい太陽光によって美しく煌めかせる。

そんなクロちゃんを見つめ返す薬研くんも同じようにしゃがみ込み、彼女の顔にかかった髪をそっと避けて頬を撫でる。擽ったそうに笑う彼女は俺もまだ見たことの無い笑顔だ。



「あー……」


「ね?あれはお邪魔できないでしょ?」


「だねぇ…。もう暫くしても戻ってこなかったら飲み物届けてあげようか」



薬研くんが一緒だから大丈夫だろうけどね。
皆も同じことを思ったのだろう、ジュースを飲んでもう少し休憩することにしたようだ。俺も小腹が空いたしアイスでも食べよう。

……と、腰を落ち着けた直後だった。



「クロ!あんたいつまでパーカー着てんのよ!いい加減脱ぎなさい!」


「え…ちょ…っ!」



今の今までスイカ割りをしていた筈の瑠璃がクロちゃんたちに突撃した。空気読もうよ瑠璃…。

クロちゃんと薬研くんの間に割って入り、パーカーに手を掛けて無理矢理脱がそうと…って水着でもそれはダメでしょ!



「おいおい、落ち着いてくれや瑠璃!そんなに押したら…!」


「薬研もいつまで黙って我慢してんのよ!大好きなクロの水着姿が拝めるのよ!?あたし知ってんだから!男は皆ケモノなんでしょ!?」


「あんたなんてこと言ってんだよ!?」


「クロも水着着た意味は!?パーカー着たら台無しじゃない!こうなったらあたしが脱がせてやるわ!」


「ま、待って瑠璃…!脱ぐっ、脱ぐからっ!それ以上押さな…っ、うわっ!?」


「きゃあ!?」


「クロ!!」



バッシャーン!!



「クロちゃん!」


「主っ!!」


「あーあ、あの馬鹿瑠璃…」



大きな水飛沫が上がった。瑠璃の馬鹿力に押され続けたクロちゃんの足が縺れて転んでしまったのだ。ビーチサンダルを履いてたせいもあるのだろう、片方が波に拐われて砂浜へと運ばれてきた。
派手に転んだねぇ。

駆け寄った薬研くんがクロちゃんに手を差し出す。



「大丈夫かクロ?」


「は、はい…。ありがとうございます」


「怪我してねぇか?」


「怪我はありませんが…」


「ふふ、脱がざるを得なくなったわねぇ」


「お馬鹿。はぁ、このパーカー気に入ってたのに…」



薬研くんの手を頼りに立ち上がった彼女のパーカーは、もはや上着の意味を為さない。それどころか彼女のボディラインを一層際立たせ、更に遠目からでもその肌色まで透けて見えてしまっている。コレはとてもヤバいやつだ。下心満載の一般人客のいない場所で良かった。

クロちゃんもいつまでも濡れたパーカーを羽織っていたくはなかったようで、深い溜め息を吐きながらそれを脱いだ。水色で縞模様のビキニと眩しいくらいに真っ白で滑らかな肌が露になる。



「…っ」



だがやはり恥ずかしいのだろう。頬を赤らめたクロちゃんは薬研くんの袖を掴んで少し俯いていた。



「なーに隠れてんのよ!堂々としてなさいよ堂々と!」


「あんたは堂々とし過ぎなんだよ。クロ、俺の羽織っとけ」


「でもそれじゃ薬研が…」


「良いから」



咄嗟に薬研くんは着ていたパーカーを脱ぐとクロちゃんに掛けてやる。受け取った彼女は申し訳なさそうにしながらも嬉しそうに微笑んだ。ほんと幸せそうだねぇ二人とも。事故にならなくて良かったよ。
…いつの間にクロちゃんのこと名前で呼ぶようになったんだろう?

それにしても薬研くんの肌も真っ白だな。眩しい。
って、野郎の肌なんか見て俺は変態か。



「そうだ、同田貫の旦那。瑠璃のことは本丸でみっちり仕置きを頼んだぜ」


「おうよ。石切丸にも報告しとく」


「なんでよ!?」


「なんでもだよ馬鹿主!!」



自業自得だよ、瑠璃。


 

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