蜻蛉切を見るとさっきより顔を青ざめさせ、必死にクロちゃんに弁明していた。俺でも見たことないよ、その表情。
「わ、悪い奴ではないのです!村正は決して悪い奴ではっ!!」
「わかっていますよ、蜻蛉切さん。村正が脱ぐのは村正自身を私たちに知ってほしいから…。着飾られた真偽不明の伝説を脱ぎ捨て、本当の村正を受け入れてほしいが故の行動。私も薬研も皆も、ちゃんと理解しています」
「!」
「この間も手入れ中に言っていました。大怪我をさせて申し訳ないと私は謝ったのですが…」
「これくらい何てことありませんよ。いずれ来る心配性のファミリーの為、今の内に強くなって見返してやるのデス!」
「…と、意気込んでおりました」
「!そうですか…」
安心したのか柔らかく微笑む蜻蛉切。
心配性のファミリー、ね。クロちゃんのとこにも早くお前が現れると良いな。
「検非違使…。兄者は現れなかったのか?」
「残念なことに、うちにはあんたもあんたの兄貴もまだ来てねぇんだ」
「そうか…」
あーあ、やっぱり髭切はいないか。あんまり気を落とすなよ膝丸。
「お見掛けしたら膝丸さんが会いたがっていたとお伝えしておきますね」
「む、忝ない」
「そろそろ日が暮れるな。行こうぜ、大将」
「はい。では瑪瑙さん、膝丸さん、蜻蛉切さん。また今度」
「うん、またねクロちゃん、薬研くん」
薬研くんに促されて帰っていくクロちゃんを三人で見送る。彼女たちが鳥居を潜り姿が見えなくなったところで膝丸はがっくりと肩を落とした。
「兄者ぁぁぁぁぁぁ………」
「そんな悄気るなって。村正が出たクロちゃんとこにもいないんだから髭切も相当気紛れなんじゃない?」
「そうだが…」
「そのうち来るって。な、蜻蛉切」
「はい。あちらの本丸に自分が現れるのも時間の問題なのでしょう。村正も髭切も、きっといつかひょっこりと顔を出すに違いありません」
「…そう、だな」
「そうそう!ほら、そうと決まればさっさと買い物して帰るよ!天ぷら揚げるんだからさ」
早くしないと夜になってしまう。今夜は短刀と脇差部隊を夜戦に送らなきゃいけないんだから急いで戻らなきゃ。
まだ少し気落ちしている膝丸を蜻蛉切と一緒に励ましながら、万屋での買い物を終えて帰宅した。
その翌朝。
夜戦から帰城した堀川たちが一振の太刀を持って帰ってくるなんて、誰も予想だにしていなかった。
「はい、主さん。検非違使が落としてった刀剣だよ。まだ見たこと無い刀剣だよね」
「(太刀…。しかもこのタイミングって、まさかね)
とりあえず顕現させてみるか」
「源氏の重宝、髭切さ。君が今代の主でいいのかい?」
「兄者ぁあああああああ!!!!!」
「ありゃ?」
「マジか…」