「主君!主君は歌の続き知ってますか?」



秋田に訊ねられ視線が集まった。
脇差たちや蜂須賀も興味があるのか、てるてる坊主作りの手を休めて俺を見つめている。

続きね…。



「…もしも曇って泣いてたら〜、空をながめてみんな泣こう〜」



うろ覚えだったけど、そう続いていた筈だ。

……最後の歌詞は、ね。



「みんなないちゃうんですか?」


「祈った結果、晴れないわけだからね。願いが叶わなかったら泣き顔の空の下で皆仲良く泣こうってことじゃない?」


「へぇ。なんかちょっと切ないけど暖かい感じもするね」


「そうですね。でも祈るなら晴れてほしいです」


「そうだな。ほら、作ったてるてる坊主、皆の部屋に飾っておいで」


「「「「「はーい」」」」」



てるてる坊主群を抱えてトタトタと出ていく短刀脇差たちを眺めて息を吐く。深く追求されなくて良かった。
そんな俺を見て残ったメンバー、青江と蜂須賀、薬研は苦笑した。



「主、適当に誤魔化したね?」


「あれは三番ではないだろう」


「なんだ、青江と蜂須賀は知ってたのか。隠された四番の歌詞」


「へぇ、四番だったのか。それは知らなかった」


「というか薬研、話題に出すならお前が歌えよな」


「はは、歌とか雅なことはよくわからん」


「まったく…」



てるてる坊主の歌詞には諸説あるが、俺の知るそれは日本に古来から伝わっているらしいもの。特に三番は残酷な表現で有名だ。

あいつらみたいに明るく笑いながら歌えるもんじゃない。


てるてる坊主、てる坊主

あした天気にしておくれ

それでも曇って泣いてたら

そなたの首をチョンと切るぞ


昔の人は脅してでも晴れを呼び込みたかったということなのだろう。



(教えても良いけど、進んで教えたくはないよな…)



それに、てるてる坊主の頭の中身って坊さんの首だったって話だ。

雨の降り続いた日に殿様は僧侶に祈祷してもらい、しかし翌日も雨だった為に僧侶は首をはねられた。その首を白い布でくるんで吊し上げたところ雲間から日が射し込んだと…。
偶然か必然か、それがてるてる坊主の始まりだと言われている。

…そういえば、あの日も雨のち晴れだったんだよな。もう随分前のことなのに、記憶にこびりついたそれは消えてくれないらしい。



「僧侶でなくとも、俺の首も吊るせば晴れるのかねぇ」


「馬鹿なことを言わないでくれ。そんなことしたら本当に皆で泣いてしまうよ」


「…皆"で"なのか?"が"じゃなくて?」


「主が首を吊ったとして俺が泣かないとでも思っているのかい?」


「そうだねぇ。僕もその時はどうなるかわからないなぁ」


「青江も泣いてくれるのか。それは嬉しいね」


「おいおい大将、嬉しいからってやらないでくれよ?俺っちだって大将の首も命もそう易々と天に捧げてやる気は無いぜ?」


「あはは!大丈夫だって。薬研がいるなら俺の命は守られてるし、そう簡単に死ぬつもりも無いよ」



死ねるわけないだろう。やっと人生楽しくなってきたところなんだから。
だからこそ、皆には笑っていてもらいたいし願いは叶えたい。

軒下に画鋲を刺して俺が作ったてるてる坊主を吊るす。



「蜂須賀坊主〜蜂坊主〜
あ〜した天気にしておくれ〜」


「!ちょっと待て主。なんだいソレは」


「蜂須賀てるてる」


「ぷふ…っ」


「あっはははは!一生懸命毛糸解いてると思ったらそういうことだったのか!」



テーブルを叩きながらゲラゲラと笑う薬研。青江も上品にクスクスと笑みを溢し、蜂須賀の頬はひくひくと震えている。

薄紫の毛糸は髪の毛代わり。黄色の布切れを体に巻き付ければ蜂須賀そっくりてるてる坊主の完成だ。上手くできてるだろう?



「さっき蜂須賀の金像で後光が射すかもって話してたからさ。てるてる坊主でもお前ならご利益あるだろうと」


「だからって…!ああもう良い!」



ヤケクソな勢いで一体のてるてる坊主を鷲掴んだ蜂須賀は、俺と同じように赤い毛糸を解すと鋏で短く整える。顔の半分を覆って作られたソレはもしかしなくても…



「俺か」


「当たり前だろう?俺だけが吊し上げられるなんて御免だ。隣に飾らせてもらうよ」


「だったら俺はその隣に吊るすぜ」


「なら僕は薬研くんの隣に並ぼうかな」


「自分で自分のを作ったのかお前ら」



というか薬研の雑すぎないか?黒の毛糸無いからって墨で描いただろう、だいぶ滲んでるぞ。眼鏡じゃなくてサングラスだろうソレ。

青江のも髪が長すぎる。まるで濡れ女…。

確か黒いてるてる坊主だと雨が降るんじゃなかったっけ…。…可哀想だから黙ってよう。



「ああーーっ!!!なに四人で仲良してるてる作ってるの!?ズルイ!!」


「わぁっ、僕も自分のてるてる坊主作りたいです!」


「よーし!こうなったらぜんいんのてるてるぼうずをつくりますよ!」


「じゃあ…、僕は宗三兄様のを作るよ」



戻ってきた短刀たちがわいわいと本丸てるてる作りに熱中する。歌のことはもう記憶の彼方かな?

晴れたら金の鈴…は買わないと無いし、鈴カステラでも作ってお供えしようか。

明日が晴れじゃなかったとしても、またてるてる坊主を作れば良い。雨が降ってても外で遊べなくてもこうして楽しく笑えるんだから。



(笑顔の太陽が見えた…なんてね)



皆の笑顔を見て俺らしくもないことを思いながら玄関に向かう。

そろそろ遠征部隊のお帰りだ。










「帰ったぞ。これで良いんだろ?」

「おかえり、クニ。…って、あれ?」

「なんだ?」

「雨、止んだ?」

「ああ。たった今、小雨になって止んだ」

「へぇ…!!ククッ、もしかしてクニはリアルてるてる坊主?」

「は?」

「あはは!蜂須賀てるてるよりご利益あるなぁお前!!さすが俺の初期刀!よし、クニの分の鈴カステラは多目に用意しといてやるよ」

「???」


 

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