やがて考えが纏まったのか、食べ終えた鶴丸が箸を置く。



鶴「俺は受け入れても構わないぜ。研修期間中は大変だとは思うが、俺も驚きを与えつつ協力するしな。それに、そいつが立派な審神者に成長するんであれば、日々の主の負担も減るってもんだろう」


『どうでしょう? 減った分、別の仕事を頼まれるだけじゃ……』


鶴「なぁに、その時は薬研がなんとかしてくれるさ」


薬「そうだな。柄まで通」


『しちゃダメです』


薬「ははっ、冗談だ。睨むまでに留めるさ」


『(睨みはするんですね……)』


シ『でもさ、クロは本当に良いの?』


『私?』



シロに同意だと言うように、その隣に座る乱が心配そうな目を向けてくる。



乱「ボクたちより主さんだよ。政府からの研修生ってことは、今は養成所に通ってるんでしょ? 主さんのことも知ってるってことなんじゃないの?」


和「あんた演練でもよく噂されてんだろ。大丈夫なのか?」



あらま、和泉守までそんなことを言うとは……。

噂のことは考えなかったわけではない。過去改編事件を解決したことで、以前ほど私への悪い噂は無くなったと思う。

しかし、その事件のせいで私とこの本丸はとても目立ってしまった。眠りから目覚めなかった審神者たちは勿論のこと。事件については、その後の会議でも周知していたし、政府において知らない人間の方が少ないだろう。



『お気遣いありがとうございます。私なら大丈夫ですよ。もし噂のことを聞かれても本当のことだけを話せば良いですし、研修中は研修に集中させます』


和「そうは言うが、融通のきかねぇ奴だったらどうすんだよ?」


『その時はその時です。研修中の態度を一点の漏れも無く全て報告書に記載して真黒さんに突き付けます』


和「怖ぇわ!!」


薬「ははは! さすが負けず嫌いな大将だ、策は考慮済みってわけだな」


『勿論』



教える立場になるのは私も初めてなのだ。嘗められた態度をとられたとしても仕方がない。
だが、やるからには私も真面目に研修するつもりだし、研修生が応えてくれないのなら、それ相応の対応をとらせてもらう。



和「……ま、あんたがそこまで考えてんなら大丈夫か」


今「あるじさまがいじめられたら、ぼくがまもってあげますね!」


岩「がははは! 苛められようと主なら軽く三倍で返しそうだがな!」


『三倍だなんてとんでもない。記憶に残させます』


和「もっとダメだろそれ!!」



広間が笑いに包まれる。
研修生を受け入れる心配は各々あるようだが、反対意見は出てこなかった。

私を心配する声が出たことが予想外だったけれど、研修生がどんな性格であれ話が通じないことは無いと思う。あとは私の教え方次第で研修が成功するかが決まる。



『(頑張ろう……)』



夜も更けていたため、真黒さんには翌朝に研修生を受ける旨を連絡した。

研修は一週間後から一ヶ月。

どうなることやらと不安と期待を抱きながら、今日も同じく日課をこなそうと編成表と睨めっこを始めた。


 

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