躑「わあっわあっわあーーーー!!!! 本当にクロさんのとこで研修できるんですね!!」
真「うん。そうだよ」
躑「わぁあああ感激です!! 真黒さんありがとうございます!! ありがとうございます!!!!」
真「うん。わかったからそろそろ落ち着こうね」
待ち合わせ場所に到着直後。真黒さんの隣に佇んでいた男の子と目が会った瞬間に、冒頭の歓喜の雄叫びが上がった。言わずもがな、この子が私が引き受ける研修生のようだ。
薬「大興奮状態だな」
『ですね』
研修生のテンションの高さに、薬研も若干引いている。
目をキラキラさせてまだ僅かに幼さの残る研修生は、真黒さんに宥められるとハッと我に返り、ビシッと敬礼した。
……どうして敬礼なのかは不明だ。
躑「失礼しました!! 俺っ、いや、私はこの度クロさん、いや、クロ様の本丸で研修を受けさせた頂けますです……!!」
真「こらこら、全然言葉になってないから! はい、深呼吸! 吸って〜」
躑「すぅ〜〜………っ」
真「はい、吐いて〜」
躑「はぁ〜〜……っ」
自己紹介に何分費やすのだろう?
面白いから良いけれど、本丸では皆さんが待っているのですが……。
薬「なぁ大将? 俺たちは漫才を見に来たのか?」
『否定はできませんね』
真「否定してよクロ!!」
真黒さんからの突っ込みに私たちが揃って彼を見上げると、彼はコホンッと一つ咳払いをして研修生に目配せした。
躑「えっと……、初めまして! 本日よりクロ様の本丸で研修させて頂きます! 審神者登録名は躑躅(つつじ)です! よろしくお願い致します!」
今度は噛まずに言えて「よし!」とガッツポーズする研修生、躑躅さん。なんだか微笑ましい子だ。
『初めまして。ご存知の通り、私はクロです。こちらは私の近侍で……』
薬「薬研藤四郎だ」
『私に"様"は要りませんよ、躑躅さん』
躑「いやいやいや! そんな恐れ多い!」
首をぶんぶん振る躑躅さんに少し心配になる。そんなに振っては首がもげてしまいそうだ。
『呼び方に困るのであれば"さん"付けにしてください。呼び捨てでも構いません』
躑「"さん"にします! あと、俺にも"さん"はいらないです!」
『では、躑躅くんで。よろしくお願いしますね』
躑「はいっ!」
真「よし! じゃあ自己紹介も終わったところで……」
パンッと手を打ち鳴らした真黒さんが、バインダーを片手に研修について話し始める。
真「前々から言ってる通り、研修期間は今日から一ヶ月。その間はクロの本丸にずっと寝泊まりすることになるからね。最初は慣れないだろうけど、本丸での生活の仕方とかも教えてあげてね」
『はい』
真「研修内容は審神者が実際にやってる仕事を直接見ること。一人でもできるようになること。刀剣男士と私たち人間の関係性。
正直、一ヶ月でどこまで覚えられるかは本人のやる気次第ではあるけど、今回は初めての試みだからね。いけるとこまでやってほしい」
『承知致しました』
躑「俺、頑張ります!!」
真「うん、良いお返事だね」
真黒さんが躑躅さんの頭をポンポンと撫でる。犬耳と尻尾が見えた気がする。
真「あ。それから……、こんのすけ!」
こ「はい!」
ぽんっという可愛らしい音と共に、こんのすけが躑躅くんの肩上に現れた。
真「クロが懸念してた、本丸が政府管轄外だってことだけど。期間中はずっとこんのすけを常駐させるってことになったから。特に政府から特殊な結界が張られたりってことは無いけど、その辺は大丈夫でしょ?」
『はい。もしもの時はご連絡しますが、私も自分で色々対策してますし、ご心配には及びませんよ。躑躅くんは無傷でお返し致します』
躑「ふぁああ格好いぃーー!! やっぱクロさんすっげぇ格好いい!! 俺頑張る!! 超頑張りますね!!!!」
目がキラッキラだ。このタイプの人間と関わるのは初めてかもしれない。瑠璃様と同じようにも見えるけれど、彼女よりは躑躅くんの方が素直だ。
真「はいはい、頑張るのはわかったから。くれぐれもそのテンションで刀剣たちに引かれないようにね。よろしく頼むよ、薬研くん」
薬「…………」
『薬研が引いてます』
真「薬研くん!?」
薬「ははっ、冗談だ。よろしくな、躑躅」
躑「はい! よろしくお願い致します!!」
その後は真黒さんと別れ、躑躅くんとこんのすけを連れて本丸へと向かった。
道中もずっとハイテンションで研修が楽しみだと言う躑躅くんに、一ヶ月間乗り切れるのだろうかと心配が半分。しかし、この子なら大丈夫そうだと思えてしまう期待もあり、私も少しだけ肩の力を抜いた。
(あとは、皆さんの反応ですね……)
果たしてこのテンションについていける者が居るのかどうか……。
さてさて、一ヶ月間どうなることやら……。