「ここですよ」
そうして連れて来られたのが審神者養成所だった。時の政府が管理するそこには私と同じく全国から霊力の高い子供が集められ、審神者見習いとして教育しているらしい。
そもそも審神者とは…という話から始まり、歴史修正主義者、刀剣男士の顕現など、あらゆる知識を教え込まれ、護身術や刀の扱い方、霊力の使い方に至るまでとことん特訓する。
暴力は無くなったけれど、学校に通っていなかった私にその内容はかなりハードな物だった。
「妹さんについてはご安心を。前にも申し上げました通り、医療費は全て私どもが負担致しますので」
『…なら、良いです』
妹が無事ならそれで良い。その為なら、私はどんな苦痛にも堪えてみせよう。
「一つ、お聞きしても?」
『…?』
「何故、そこまで強い瞳をしているのです?」
強い瞳?何のことだと首を傾げる。私は他人からそんな瞳をしているように見えるのか。
でも、私は強くなんか無い。抵抗出来ない、弱い人間だ。
『負けず嫌いなだけです』
「負けず嫌い…ですか」
やれることをやりもしないで放り出すのが嫌なだけだ。そして、それについて周りから文句を言われるのが無償に腹立たしいと思う。だから私はどんなに苦しいことも辛いことも堪えるんだ。堪えて堪えて堪えて…周りが何も言えないくらい強くなりたいから。
『生きてる内は負けない。負けてなんかやるものか』
「……フ、…強い子だ。良いでしょう、貴女には特別に私がお力添えして差し上げます」
『?』
「いやなに、私はこの機関でそこそこ地位がある者でしてね。何かあれば私に言ってください。出来る限り叶えて差し上げます」
ただし政府のお金を妹の手術代にすることは出来ませんがと少しだけ困り顔で言う男。
何がどうしてそうなったのだろう?今の話でそんな気を起こすようなことがあっただろうか?
それとも…
『同情ですか?』
政府ということは私のことを事細かに調べ尽くしている筈。妹のことも、私の居候していた場所も知っていたわけだし。私の境遇を可哀想だとでも思ったのだろうか?
「いえいえ。ただ、貴女のその瞳に惹かれただけです」
意味がわからない。
私が訝しげに目を細めると、その人は相変わらずニマニマと笑いながら姿勢を正した。
「自己紹介がまだでしたね。ここでは真名は教えてはいけない決まりになっているので、偽名ですが。私は真黒と申します」
『……マグロさん?』
「いやいやいやいや!マクロですマ・ク・ロ!!」
『冗談です』
「冗談言えたんですね…(無表情は難しいな…)」
…悪い人では無さそうだ。直感だけど。
何かあったら頼らせてもらうとしよう。
『よろしく…お願いします』
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」